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LV3「落語と江戸風俗」

つだかつみ・中沢正人著/教育出版/1700円

競作かわら版 落語と江戸風俗
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ムック本。
江戸のかわら版みたいな構成にしてあり、代表的な落語の解説を江戸風俗解説にからめながら豊富なイラストとわかりやすい文章で実に事細かに教えてくれる親切な本。

有名な落語の筋はわかるわ、背景はわかるわ、当時の道具やファッションもわかるわ、遊郭や髪結床の仕組みも絵付きでわかるわ、土地勘までつくわ、名人たちのくせまでわかるわ、まぁなんつうか、おせっかいなくらい親切な本だ。
イラストがアイデア豊富にまとめてあるので、たとえば当時の吉原の地図と現代の地図が比べてあったり、落語に興味ある人にはとっても役立つ本。帯で林家たい平が「師匠のこん平はこんなに優しくていねいには教えてくれなかった。皆さんにはそっと教えます。私の本当の師匠はこの一冊です」と書いているが、確かにそんな感じの本である。落語好きはわりと必携かも(ただし初級者中級者)。

2003年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 雑学・その他

LV5「一九七二」

坪内祐三著/文藝春秋/1800円

一九七二―「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」
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著者に指摘されるまで意識もしなかったが、確かに1972年というのは時代の変わり目だ。前書きにも書いてあるが「はじまりのおわり、であり、おわりのはじまり」なのだ。ここまで顕著に時代の境目ってあるのね、とまずそれにビックリした本である。

1972年に何があったか、例をいくつか上げよう。
札幌オリンピック。連合赤軍浅間山荘事件。横井庄一グアム島で発見。沖縄返還。佐藤栄作引退。田中角栄「日本列島改造論」発表。「四畳半襖の下張」発表。日本プロレス中継終了。「ぴあ」創刊。日中国交回復。カンカン・ランラン到着。ローリングストーンズ幻の初来日。森昌子新人賞……まぁ詳しくは本書をお読みいただくとして、これらひとつひとつの事件がすべていろんな事象の境目になっているのである、という分析を細かく緻密に著者は書いていく。
それらがこじつけに感じられないのは著者の筆力のおかげでもあるのだが、実際そうなのだろうと納得が行くもの。1972年あたりに中学高校大学を過ごした人たちには実感をもって「あぁ、あそこが曲がり角だったのか」と肌感覚でわかることだろう。個人的には浅間山荘前後の記述の掘り下げ方が少々くどいもののいろいろ発見があって面白かった。

ちなみに坪内祐三の本は読後感がいつも尻切れトンボである。
彼自身三部作と言っている「靖国」「慶応三年生まれ七人の旋毛曲り」そしてこの「一九七二」もその感があり、厚さを倍にしてもいいからキレイに満足させてほしいと読後に思った(この本も400ページ超でいい加減長いのだが)。きっと著者としても収拾つかなくなっちゃうのだろう。テーマも素材も膨大ゆえに。

2003年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 評論

LV5「ビデオで世界を変えよう」

津野敬子著/平野共余子構成/草思社/1700円

ビデオで世界を変えよう
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ポップアートに憧れて渡米したひとりの日本人女性(著者)が、当時ソニーから出たばっかりだったビデオに偶然出会い、ビデオ・ドキュメンタリーを世界でほぼ初めて手がけ、キューバやベトナムへもビデオかついでアメリカ初取材を単独敢行し、テレビ報道の世界にも多大な影響を与え、夫のジョン・アルバートとともに今日のビデオ・ジャーナリズムを創始し繁栄させたってことを知ってた人〜?と、誰彼なく聞いてみたくなる。
そうか、ビデオジャーナリズムって日本人が始めたんだ〜!と誇らしくなること間違いなしの、彼らの半生の活動記録が本書。つか、へぇ〜の連続。知らなかったなぁ。

誇らしい部分はいろいろあるが、彼らが自分たちだけで開発し取得したビデオ技術や機材を独占せず無料で多くのアメリカの若者たちにワークショップで教えることを長年続けてきたことや、キューバやベトナムといういわゆるアメリカの敵たちの素顔をビデオならではの視点で描き平和に貢献しつづけたことなどは特に感動的。というか、「世界を変えよう」という意志が感動を呼ぶ。ビデオに限らず、どんな手段でも可能なはずだ。そのさりげない意志に感嘆する。

半生記っぽい本なので、エンターテイメント性は特になく淡々としているのだが、これからの人生を考えるに当たってとても刺激になるいい本だった。少なくともボク個人にとって。

2003年07月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 映画・映像

LV2「慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り」

坪内祐三著/マガジンハウス/2900円

慶応三年生まれ七人の旋毛曲り―漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・紅葉・緑雨とその時代
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約550ページの労作。
「大」労作になるはずだったのに、途中で著者自身飽きてしまい、尻切れトンボで終わっている。それでも労作ではあるのだが、置いて行かれた読者はどないすればいいねん、って感は残る。

慶応三年に7人の偉人が生まれている。
夏目漱石、正岡子規、尾崎紅葉、幸田露伴、斉藤緑雨、宮武外骨、南方熊楠。
彼らの人生をそれぞれ並列に追うことで、近代日本の歩みを解き明かしていこうという野心作で、目の付け所は素晴らしいのだが、どうにもこうにも構造上散漫になっていくし、膨大な原文資料を読み解いていくのが難解であるし、7人という多人数を並列に追う無理が途中からモロに出て来ちゃっているし、緑雨や熊楠はあまり登場しないし、盛り上がりなく時系列的に平坦に読んでいくのが(読者的に)だんだん苦痛になってくるし、で、まぁなんというか、労作なのだが、辛い本になっちゃっているのが残念。

個人的には尾崎紅葉の実際みたいなものが知れたのが収穫。面白いエピソードも多数あり、文学史的にはいい本かもしれない。
でもなー、破綻しちゃっているよなー。著者の筆力ははなはだ評価しているが、ここまでの本を書くのには、少しタイミングが早すぎたのかもしれない。もっと筆力がついてから書いてほしい題材であった。とても期待しただけに、残念。

2001年10月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 歴史小説

LV4「わたしのグランパ」

筒井康隆著/文藝春秋/952円

わたしのグランパ
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著者にとっては「時をかける少女」以来のジュブナイル(少年少女小説)。「時をかける少女」は大好きだったからかなり期待して読んだ。

読んですぐ思ったのは「筒井康隆は夏目漱石の『坊ちゃん』を歳とらせてみたかったのかな。そして彼に平成の街を歩かせてみたかったのかな」ということ。
古き良き昭和(明治?)の殻をお尻に残しているような任侠ジジイを平成の孫娘と触れあわせてみることで、著者は、姿勢が良かった頃の日本と姿勢が悪くなり始めている日本を接触させてみたのだと思う。一本筋が通っている生き方。そういう生き方をこの時代に提示したかったのかもしれない。

夏目の「坊ちゃん」がわりと素っ気なく終わるように、この本も素っ気なく終わりを迎える。なんだかこのジジイともっとずっと一緒にいたかった感じの物足りなさ。中学生の描写もありがちかつ性善説的で気恥ずかしい部分が多い。そういう意味ではどうかなぁと思ったが、ジジイの存在はとても印象的で素晴らしい。人物造形の勝利だろう。

1999年11月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV3「靖国」

坪内祐三著/新潮社/1700円

靖国
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あなたは靖国神社についてどのくらい知っているだろうか? 靖国神社公式参拝の是非について騒ぐ大新聞の記事についてどういう意見を持っているだろうか? そもそも靖国神社ってなんなのだ?・・・そういう質問に「そういえばちょっと知ってみたい」と思った方は是非ともどうぞ。

読み物的な面白さは思ったよりなかったが、知的好奇心は十二分に満足させてくれる好著。
「え?靖国神社って超モダンでハイカラな祝祭空間だったの?」と次々目から鱗が剥がれていくこと請け合いだ。例えば神社でありながら神主がいなかったことなんて知っていた?

総花的評論になりがちな題材を一貫した視点から書いているのがうまい。「靖国的なものの消滅」についての著者の姿勢が一貫しているのもいい。上手だしなんだか古くさい名前なのでかなりのお年かと思ったら、この著者ボクと3つ上なだけの41歳。うーん。まいった。

1999年06月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 哲学・精神世界

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