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瀬尾まいこ
「強運の持ち主」

amazon占い師ルイーズ吉田を主人公にした短編小説集。
瀬尾まいこは三冊目。どの本も題名が普通っぽい。その普通ぽさも著者らしいのだが、ちょっと惜しいかな。この本ももう少しマシな題名があった気がする。
相変わらずあっさりさっぱりした読後感。でも主人公設定がなかなかユニークで面白いので印象に残る本となった。技のないインチキ占い師。適当に相手から情報を引き出して、気持ちよくさせてあげ、背中を押してあげる仕事。占いというより相談。そして当然そこにいろんな悩みが持ち込まれるわけで、小説的展開に持って行きやすい。もっと野心的に書けばいくらでも劇的なお話しになるだろうに、それをしないでひたすらあっさり持っていっちゃうのが著者独特の価値観だ(価値観なのだろう。他の本もそうだもの)。
主人公の彼が「占い上では強運の持ち主」という設定なのだが、特にそれをいかした展開はない。その辺、やっぱり少し物足りなく読み終わった。意外と数冊のシリーズにして、全体で俯瞰したら面白い題材なのかも。続編とかあったらダラダラ読みたい気分。
2007年04月22日(日) 21:13:00・リンク用URL
ジャンル:小説(日本)
「温室デイズ」

amazon「幸福な食卓」を読んでとても良かったのと、学級崩壊の描き方がスマートで好感がもてたので、続けて瀬尾まいこの「温室デイズ」を読んだ。
テーマはまっすぐ学級崩壊とイジメ。
とはいえ全然ドロドロしてなくて、あっさり推移していく。この、真っ向から立ち向かわないあっさり感が逆にリアリティを生んでいる。上から見て書くとお説教っぽくなったり、懸命に生徒たちに寄り添って書くとオーバーになったりするところを上手に避けて通ることによって、逆にリアルな空気感が出てきているのである。金八なら解決できるところをあえて解決させない「流し感」。このあっさりした収め方は逆に勇気がいる気がする。なかなかやるなぁ。
ただ、じゃあそのリアル感だけで小説が持つかというとそうでもない。小説全体として考えると物足りなかったのも確か。収めどころがどうしても欲しくなる。あっさり終わって好ましいけど物足りない。複雑な感じ。あと「幸福の食卓」に出てきたような秀逸なキャラがひとり欲しかった。不良役がそうとも言えるがもう少し突っ込み足りず。惜しい。
2007年04月21日(土) 8:57:03・リンク用URL
「幸福な食卓」

amazon寡聞にして瀬尾まいこのことを知らなかったが、中一の娘に激薦められて読んだ。最初がこの「幸福の食卓」。とても良かった。しばらく他のも読んでみたい作家である。
出てくるキャラがとてもいい。直ちゃんも大浦くんも実に魅力的で、しかもリアリティがある。父も母も通り一遍でないキャラ設定で、シンプルに見える断片の奥底にちゃんといろんなものを抱えている様子がさりげなく描写されている。なんつうか「表面に見えている姿は氷山の一角」的な描き込みがちゃんと出来ている感じ。なかなか種を明かさず、だんだんキャラの薄皮がはがれていく快感。そしてはがれていくに従ってキャラがより魅力的になるのである。逆のパターンも多い中、さすがな筆力と構成力。周到にキャラ設定して書き始める作家なのかもしれないが、意外とそういうのを感じさせないなにげなさもこの著者のイイトコロ。
ふわふわ生きているようで意外と地に足が着いているキャラたち。細かいところの書き込みがしっかりしているのでリアリティがあるのだが、この空気感はとてもモダンだと思った。イマっぽい。えてしてステロタイプな描き方になってしまう現代の病巣(家族崩壊や学級崩壊)もスラリとスマートに書ききっている。こういう距離感がいいな。
2007年04月20日(金) 15:35:27・リンク用URL
ジャンル:小説(日本)




