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真保裕一
「ダイスをころがせ!」

amazon選挙小説、とでも呼ぼうか。
久しぶりに読んだ真保裕一だが、相変わらずテンポよく熱く痛快。「奪取」で感じた軽快感が帰ってきた印象。選挙に出馬する友とそれを第一秘書として助けるリストラされた主人公を追いながら、大人になりきれない青年男女たちが大人になっていく物語をそこに上手にかぶせた。
作家の志として、国政参加を小説という形で取り上げ呼びかけたのはよくわかるしめちゃめちゃ評価したい。底流には「○○のせいとか嘆いてばかりいないで、参加しようぜ」という著者本人の熱い憤りがあると思う。それがこのテーマを選ばせ、熱く書かせたのだろう。題名もそこから来ている。とにかく手持ちのダイスをころがそう、と。政治の現状の説明などもくどいくらい入れ込んであり、エンターテイメント小説として読むと冗長なのだが、一種に啓蒙小説として読むと意図はよくわかるのである。
ただ、キャラやエピソードや他陣営との確執(ミステリー的な部分)が、すべてにステロタイプ的なのが残念。取材はよくされているのだが、表面的にストーリーが展開していくだけで、深みが足りない気がする。キャラがひとりふたり、もう少し深く描き込まれていたら、ずいぶん変わったのだと思う。とても面白く、志も高い本だけに、惜しい。
2002年03月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「ボーダーライン」

amazon真保裕一待望の新作。
カリフォルニアを舞台にめちゃめちゃハードボイルドな探偵小説を書き上げた。
日本在住の作家とは思えないその筆致、リアリティ、会話、展開、それぞれ見事であるが、名作「ホワイトアウト」に見られたような「迫力&圧倒的ストーリーテリング」みたいなものが感じられないのは何故だろう。彼の地の気候にも似た乾いた筆致にこだわりすぎたか。細部とストーリーテリングとのバランスが悪いのか・・・。いや、たぶん、後半に出てくる「犯罪者は先天的に出来上がっているのか、それとも教育か、または環境ホルモンか、キレる若者の精神構造はどうなのか」的な長い議論が全体のストーリーを邪魔しているのだ。説明不要な部分に思えたが…?
見事な重層構造でしっかり読ませるのだが、ちょっとだけ理屈っぽすぎるのが弱い。彼自身がいまボーダーラインにいるのかもしれない。
1999年10月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「密告」

amazon元オリンピック候補の警察官に降りかかった密告者の汚名。警察組織の腐敗を描く長編である。
相変わらず真保裕一は読ませる。面白い。
が、これに関してはちょっと読後感が悪すぎる。それに主人公の行動がいまいち読者として納得いかないのが難だ。
例えばゴダードの本に出てくる主人公もおバカな行動をとるけど、どこかで納得がいく。それは人物造形の違いだろうか。いや、ちょっとしたセリフの違いなんだろうな。とにかくカタルシスがあまり感じられず、読んでいる間も読後もなんだか気分がすぐれなかった。惜しい感じ。
1998年08月01日(土) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「朽ちた樹々の枝の下で」

amazon特殊な職業の人を題材に展開するいつもの真保節。ちょっと前の著作だが、森林作業員と自衛隊がからむよく出来たサスペンスである。
ただ、ちょっと「火曜サスペンス劇場」的薄っぺらさを感じてしまった。「ダイハード」的アクションと「野性の証明」的シチュエーションはまぁいいとして、ちょっと盛り上げ方がサスペンスしすぎているというか…。なんだかいろんなものを合体させてエンターテイメントにした感じ。題名は妙に文学的だし。
彼のいつもの切れ味に比べると数段落ちる印象。もちろん真保裕一の中では、なのだけど。普通の作家よりずっと面白いけど、彼にしてはちょっと不調、という感じをうけた。
1998年02月01日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「防壁」

amazon著者には珍しい短編集。
VIPを守るSP、特殊救難隊員、不発弾処理隊員、消防士。危険と隣り合わせで働いている人々を4パターンとりあげ、著者お手のもののストーリーテリングでその事件と内面を追っていく。
それぞれの危険の中に潜む同僚への疑念をモチーフに、内的サスペンスと危険な職業そのものの描写とが上手に絡み合い物語を深くした。前より内面の描写が多くなってきたのがまたうれしい。
でも、でもでもこの人にはゴツゴツした長編をやっぱり期待してしまう。この程度の短編を書ける人は他にもいる。小説筋肉の訓練として短編をやってみたのならいいが、とりあえず長編を期待したい。
1997年12月01日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:小説(日本)
「奇跡の人」

amazon不思議な小説である。「ストーリーテリングの真保」にしては大人しいなぁ、なんか偽善的だなぁと読み進む。
でも大丈夫。ラストの方でいろいろひっくり返して著者の真骨頂を示してくれるから。なんだか「野性の証明」を思い出させる展開。「野性の証明」の一人称版か。
ただ帯にこう書かれてはたまらない。「圧倒的な人間愛にあふれた生命の鼓動」だって。おい!ちょっと違うだろう。皆さん、違うんです。そういうお涙物ではありませんよ。ちなみに著者は長年不得意だった「女性描写」をやっと掴んだらしく今回はとても自然に描けている。次作も楽しみ。
1997年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「取引」

amazonこのところの日本ミステリー界をぶっちぎりでリードしている著者のずいぶん前の作品。92年、デビュー2作目のものである。
実録物ぽい作りでちょっと安っぽいところがあるのだが、ストーリーテリングの才はやはり図抜けている。
映画的効果を狙った場面展開といい、女性キャラの描き方のヘタクソさといい、今の著者の面影はかなりある。そういうのを見つけて喜んでいるのはもうボクがファンだからなのだろう。まぁでも良く出来たミステリーだ。今読み返しても時代の古さを感じないところがすごい。
1997年09月01日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「ホワイトアウト」

amazon著者の本は「奪取」に続き2冊目。
他のも全部読もう、と読み終わって思った。実に良く出来ている。
一応サスペンス/ミステリーものだが、のっけから見事に小説世界に引きずり込み、最後まで巻置くあたわず。キャラの描写も素晴らしく読了後の充実度が違う。このままハリウッド大作映画になる出来栄え。映画化されれば「ダイハード」を越えるだろう。
ストーリーテリング、ディーテイルの書き込み、リアリティ、すべて高レベルだ。
ただ、ストーリーに厚みをつけるはずだった爆破事件のエピソードがそんなに効かなかったのが惜しい。
1997年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー





