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柴田元幸
「翻訳夜話2 サリンジャー戦記」

amazonうーん。前作の「翻訳夜話」でお腹いっぱいかな、ボク的には。あっちの方が数倍面白かったし、知的興奮があった。
今回は「サリンジャー戦記」ということで、村上春樹が訳した「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の訳出裏話になっているのだが(他にもサービス原稿いっぱいなのだが)、なんだか(厳しく言えば)言い訳と苦労話と自慢が感じられてちょっと鼻についてしまった。著者は両者ともに尊敬しているボクだが、これは蛇足だったのではないかなぁ。「キャッチャー」に(著者との契約で)訳者あとがきを載せられなかった村上春樹が、せっかく書いた原稿の行き場を作りたくて対談もつけてしまった、みたいな見方すらしてしまうボク…。
もちろんサリンジャーマニアなボクだし、著者両者ともに好きなので、内容自体を楽しまなかったかと言われるとウソになる。
あぁこういうことだったのか、とか、なるほどなるほどー、とか、でもさぁ、とか、いっぱいあって十二分に楽しんだ。でもね、やっぱ蛇足だと思うのです。柴田元幸も、村上春樹を前にすると妙に軽薄でイヤ(笑)。つか、好きな素材が揃いすぎていて、なんか気分的に天の邪鬼になってしまったかも。そんな複雑な気分デス。
2003年09月01日(月) 12:00:00・リンク用URL
「夜の姉妹団」

amazon副題が「とびきりの現代英米小説14編」。
お馴染みのミルハウザーやレベッカ・ブラウンをはじめとして、あまり知られていない短編作家たちまで、編者が趣味で集めたオムニバス短編集。雑誌「エスクァイア」への連載をまとめたものだが、連載条件は「編訳者の好きなもの」ということだけだったらしく、編訳者は非常に乗って訳している。柴田元幸訳にハズレなし、というボクの信頼に応えてくれる名短編集である。
表題の「夜の姉妹団」そして続く「結婚の悦び」の二編を読んでまず圧倒される。
この後はもう編者の思うつぼ。それぞれ構成に凝った確信犯的短編がこれでもかと登場し読者を唖然とさせ感動させる。ラストの「北ロンドン死者の書」まで息もつかせない(中には相当変なのもあって少々困る場合もあるが)。こういう完成度が高く想像力も高く仕掛けレベルも高い短編群を読むと、日本の、ただ日常の小さな気持ちを書きつづっただけの短編たちがいかに「なんとなく書かれているか」がよくわかる。エッセイ的小説と本当の小説の違いをまざまざと見せつけられた思いである。
短編をひとつ読み終わるたびに、日常が異化され、違って見えてくる…そんな小説に年いくつ出会えることだろう。そういう小説をまとめて提供してくれた柴田元幸に拍手である。いや、面白かった。
2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:小説(海外)
「翻訳夜話」

amazon素晴らしい企画。本屋でこれを見つけたときは目をむいたぜ。
なにせ村上春樹と柴田元幸が翻訳について語るのである。そのうえ村上がオースターを、柴田がカーヴァーを訳して対比させて、そしてそれをテキストにしてまた語り合うのである。うーむ。なんちゅう気の効いた企画なんだ!!
彼らの翻訳手法の対談は、同時に優れた文章談義になっており、また小説表現の秘密にまで踏み込まれている。このところ翻訳論みたいな本がいろいろ出ていたが(今月もそういう本を一冊読んだが)、納得したという面でこの本を越えるものはなかなかないだろう。つうか、たぶん「名手による経験談」かつ「平明シンプルな語り口」が効いているんだろうな。青山南も加えて三人で話したらまた違った展開だったろうなぁ。そういう対談も読んでみたい。
翻訳で本の内容が変わってくることにボクが気がついたのはディネーセンの「アフリカ農場」を違う翻訳で読み比べた経験から。
それ以来特に翻訳には注意を払っているが、村上と柴田の対訳を読んでみて「これほどまでに違ってくるんだな」と驚愕。だって同じ小説がまるで違う趣になるんだよ。比較的文体が近いふたりなのに。参ったな。そういう驚きを得るだけでも価値ある本。
2000年11月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
「アメリカ文学のレッスン」

amazon柴田元幸が雑誌「本」で連載していた「アメリカ文学講義ノート」に加筆修正し、改題したもの。
ボク自身は、講義とかレッスンとかいう題名は内容を言い表していないと思う。確かに読むに従いアメリカ文学の全貌が文学史と違う側面から浮かび上がっては来るのだが、これは決してレッスンではない。「アメリカ文学を通してみた人の世」であり「アメリカ文学によって表される人生の諸相」を著者の視点で突っ込んで考えていったものである。
かなり面白いのだが、レッスンとエッセイの中間といった感じになってしまい、中途半端感があるのが残念。もっと生き生きとしたエッセイにしてほしかったなぁと思う。アメリカ文学についてある程度背景をわかっている層に対してのちょっと高度なおもしろエッセイみたいのが読みたかった。
読んでくると彼は意外とレイモンド・カーヴァーに刺激されているのがわかる。カーヴァーの代表的翻訳者は村上春樹だが、柴田元幸の訳も読み比べてみたいと思わせる。作家が訳すのとはまた違ったミニマリズムの特徴がそこに表出してきそうだからである。「アフリカの日々」に代表的訳がふたつあるように、カーヴァーにも欲しい。
2000年06月01日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:評論
「むずかしい愛」

amazon副題は「現代英米愛の小説集」。
スティーブン・ミルハウザーやレベッカ・ブラウンをはじめとしてウィリアム・トレヴァー、ヘレン・シンプソン、グレアム・スウィフト、ウォルターモズリイ、V.S.プリチェット、ジョン・クロウリーと、日本ではマイナーな作家たちの短編を集めたもの。
テーマは題名通り「むずかしい愛」。つまりは普通でない愛の物語だ。
冒頭のレベッカ・ブラウン「私たちがやったこと」が特にいい。いつも一緒にいるために片方は耳を焼き、片方は目をつぶした恋人達の物語。そう、そんな「変な愛の物語」がいっぱいつまった本なのだ。いや、愛はいつもどこか欠けている方が強くなる。そういう意味では「強い愛の物語」とも言えるかもしれない。
編者は信頼する柴田元幸。彼が訳したものはハズレがない。ただ、今回はテーマ先行って感じで、ちょっとレベル的につらい短編もあったのも確か。秋の夜の就寝前にじっくりつき合うにはとてもいい本だけど。(p.s. 嶋津ふみさんありがとう!)
1999年10月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:小説(海外)
「死んでいるかしら」

amazonポール・オースターの訳者として初めて著者に出会って以来、彼が訳した本を見つけたらかなりの確率で読んできた。この著者の訳本はハズレが少ないからだ。そのうえ訳文のセンスも素晴らしい。エッセイも出していて「生半可な学者」はたいへん楽しんだ。
が、しかし、このエッセイはイマイチだ。
中にはなかなか面白いのもある。特に表題作などはいい味だしている。でも玉石混淆すぎる、というのが正直な感想。全く面白くないのも多い。ファンとしてはちょっと残念。
1997年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:エッセイ




