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沢木耕太郎

LV3「無名」

沢木耕太郎著/幻冬舎/1500円

無名
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あの沢木耕太郎が無名の人である実の父親の死について書いたというのだもの、読まざるをえないだろう。
でも、実はあまり期待しなかった。沢木耕太郎はある冷たい客観性を持った上で対象物に(仕事として)熱く近づいて行くときにこそそのチカラを発揮すると思うから。父が対象物というのは少し出発点がウェットになりすぎ、著者のいい部分が活かされないのではないかと予想したのだ(名作「深夜特急」も、彼は基本的に対象物に冷たい。そしてそれを熱めに書く。逆のように思っている人も多いと思うが、ボクはそう思う。まぁ時間を置いて書いたらしいのもあるかもしれないが)。

ボクの予想はある部分当たりある部分はずれた。どうも父親に対してもともとウェットではなかったようだ。だから彼の文章の良さはキープされていた。が、熱く近づくには苦しい対象物だったようで、ぐっと胸に来るチカラが全体を通して感じられなかった。たぶん著者自身、抑制を効かせることを意識していてそれが効き過ぎたのかもしれない。また著者ならではの掘り下げがいまひとつなのも不満。全体にまぁまぁ良かったのだけど、沢木耕太郎が書くならもっと何かを期待してしまう。そんな感じ。

2003年12月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション

LV2「世界は『使われなかった人生』であふれてる」

沢木耕太郎著/暮しの手帖社/1300円

世界は「使われなかった人生」であふれてる
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いい題名である。で、題名からはわかりにくいが、実は映画評コラムを集めた本である。
「暮しの手帖」という渋くも良質な雑誌に連載中のものから30編選んだものだ。著者も書いているが、これは映画評というよりは映画に触発された著者のエッセイという感じで、映画の筋は追ってくれるが、映画に密着して話しが進むわけでもない。それがボクにはちょうどいい距離感であった。

本編に入る前の短文がいい。映画を想うとき語るとき、我々は「ありえたかもしれない人生」というスタンスをとることがよくある。ありえたかもしれない人生をそこに見るのだ。でもこの本は「使われなかった人生」というスタンスをとることでもう一歩踏み込んでいる。「『ありえたかもしれない人生』には、もう手の届かない、だから夢を見るしかない遠さがあるが、『使われなかった人生』には、具体的な可能性があったと思われる近さがある」と。で、「使われなかった人生」がいかに我々の間に溢れているかを語っているのだ(ここらへんは本文を読まないとちょっと伝わりにくいかも)。

ただ、使われなかった人生、というスタンスが30編もの映画評にきっちり活きているかと言われるとそうでもない。そのスタンスを活かした狙いのエッセイ、というわけではないのだ。題名やはじめの短文がいいだけに、そこにちょっと不満が残るのは確か。

2002年02月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:映画・映像 , 評論

LV1「貧乏だけど贅沢」

沢木耕太郎著/文藝春秋/1524円

貧乏だけど贅沢
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著者がテレビに出ないのは正解である。
だって紙上対談ですらこんなに面白くない。アドリブの人ではないのだ、沢木耕太郎は。これはたぶん対談相手のことを調べすぎていることも一因だ。対談に際して準備しすぎ。著者自身も「納得するまで相手の作品を読んだり見たりしたうえでないと安心してその人に会うことができない」と書いている。うーん…それでは対談でも対話でもなくてインタビューだろう。

内容は「旅をめぐる対談集」といったところ。
井上陽水、阿川弘之、高倉健、群ようこ、田村光昭など、魅力的な人選なのだが…。対談者のことはいっぱい調べているかもしれないけど、著者自身はわりとワンパターンなしゃべりだから、なんだか読んでいてつまらない。インタビューでもない、アドリブ的な対談でもない、中途半端さ。

1999年04月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:対談 ,

LV3「天涯 ~第一 鳥は舞い光は流れ~」

沢木耕太郎著/SWITCH LIBRARY/3200円

天涯〈第1〉鳥は舞い 光は流れ
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沢木耕太郎初の写真集。
短文がほんの少しついてはいるが、まぁ写真集と言ってもいいだろう。旅をしながら著者がどういった視線でモノを見ているのかが実によくわかる写真集だ。

天涯=地の果て。常に自分を天涯に置き、自分と世界との距離感を客観的に見つめている彼の写真は実にさめている。雄弁さはまったくなく、どちらかというと寡黙だ。ボクはその寡黙さを愛するが、少々物足りないのも事実。ただ、見終わって「耕太郎ブルー」と言ってもいいような「青」が目に焼きつくのが印象的ではある。これは「第一」となっているので次作が出るのだろうが、それを買うかどうかは微妙。

1998年01月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , 写真集・イラスト集

LV5「檀」

沢木耕太郎著/新潮社/1680円

檀
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この本を読んだ人は必ず「火宅の人」が読みたくなると思うのだが、読むとまた必ずがっかりすると思う。もうこの本自体が「火宅の人」の面白さを越えているからだ。

檀一雄の一代記をその二人目の妻ヨソ子を通して語った本書は、フィクションでもありノンフィクションでもあるような不思議な文体で書かれており、読み終わると結局だれにもカタルシスを感じられないもどかしさがある。遠近感がつかみにくいのだ。だがその文体自体がヨソ子の性格を表しており、読者は自然に「ヨソ子による世界」に導かれていくわけで、これはもう達人技と言ってもおかしくないうまさなのだ。

1996年01月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝

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