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斉須政雄
「調理場という戦場」

amazon三田の名フレンチレストラン「コート・ドール」のシェフである著者はいままでに数冊名著を残している。特に「十皿の料理」は名作で、レシピとその思い出を語っているだけなのに、何度もの再読に耐える深みを持つ。その「十皿の料理」が横軸だとすると、この本は著者の修行店を順番にたどることで縦軸で彼の人生を鳥瞰できるようになっている。両方読むと欠けているパーツが埋まっていき、見事にひとつの人生が見えてくる感じだ。
前半は傑作に近いと思う。
が、中盤から後半に向けてお説教めいた人生訓が出てきてしまい、ちょっと鼻白む。著者の持ち味は(その料理も含めて)淡々として客観視だと思うのだが。 歳を経て、そろそろ言ってもいいか、という部分はあるのだろうが、少々くどく、謙虚と声高主張の入り交じり方がバランス悪く、前半に感じた感動が色あせていくのを読んでいて感じた。惜しい。
著者のレストランは3回ほど行っているが、最新では去年の今頃行き、そのときはちょっとがっかりさせられた。ハズレがない店(シェフ)と信じていただけに「カラダの調子でも悪いのではなかろうか」と心配した。が、この本を読んでちょっと理由がわかった気がする。人生を語り、説教を始めてしまうと、ある意味自分の言葉に縛られて、人間「守りに入る」場合がある。「自己模倣しだす」場合もある。とても難しいことだとは思うが、まだそうなってほしくないシェフである。
2002年10月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「メニューは僕の誇りです」

amazon東京は三田のフレンチの名店「コートドール」料理長である著者が書いた第二作目。
前作「十皿の料理」はシェフが書いたエッセイとしてはベストと呼べるものだが、今回も味わい深く楽しめた。文体が素っ気なく素朴で稀薄なのだが、コートドールの料理の演出と似ていてなんだか微笑ましい。シェフの人柄が出ていてあの店に行ったことがある人ならとても楽しめると思う。
あとがきで「前作と多少のダブりがある」と書いてあるが、ボクとしてはもっともっとダブってほしかったところだ。
前作が出てずいぶんになるし読者も同じとは限らない(既読の読者だって前作の内容を覚えているとは限らない)から前の本と合体させるくらい繰り返しが多くても読者は喜ぶと思うのだ。というかはしょっている部分がわりと興味深いところだったりするので(フランスでの体験など)、前作で言及しているのかもしれないがもっともっとそこを読みたくなるのである。そういう意味でちょっと消化不良が残るのが残念。
それにしても、同じように自分のメニューのことを語っているのに、数カ月前に読んだあるシェフの本とはどうしてこうも読後感が違ってくるのだろう。料理への姿勢の違いなのであろうか。
1998年11月01日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒




