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久世光彦

LV3「蕭々館日録」

久世光彦著/中央公論新社/2200円

蕭々館日録
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無人島に一冊持っていくとしたら漱石の「吾輩は猫である」を持っていく、という著者が書いた久世版「吾輩は…」である。

語り部は猫から5歳の早熟少女に変えてあり、登場人物も(名前は変えてあるが)芥川龍之介、菊池寛、小島政二郎らであり、時代も大正から昭和に変わる頃、と、もちろん著者なりにアレンジはしてあるのだが、元本は明らかに「吾輩は…」。あそこに漂う高等遊民的空気と語り部による観察・批判の鋭さを再現しようとしたものなのである。

「猫」に比べて語り部の「麗子」が同族である人間な分、視点が「猫」よりだいぶん人間に近く、それが中途半端な感じになっていて--麗子のヒトとしての心情が描けすぎている--ちょっとウェットに傾きすぎている。そこが強みでも弱みでもある本。向田邦子が書いた方がもっとドライになって面白かっただろう。

「重箱の隅っこに文化がある」という一文があった。今時重箱の隅など、だれも覗かない。その淋しさをバネにしてしっかり書き込んだ労作だとは思う。相当な知性と緻密な下調べ、そしてこういった筋がない物語を破綻なくまとめあげる筆力、感服する。
が、この馴染めない感じはなんだろう? もうボクがこういうものを楽しめなくなっているのであろうか。駆け足で過ぎていく時代へのアンチテーゼとして示された本でもあるとは思うが、まさに駆けている状態のボクは何度か途中で挫折しそうになった。心の余裕がある時にゆっくりスルメのように味わう本であるかもしれない。

2001年07月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV1「昭和恋々」

山本夏彦・久世光彦著/清流出版/1600円

昭和恋々―あのころ、こんな暮らしがあった
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この超絶共著でこの評価、というのは、期待をかなり裏切った、ということです(期待しすぎ?)。

書き手抜群。昭和という故郷を失った我々が、昭和を恋々と懐かしむ際の語り部として彼らはまず最良の人選。題材も抜群。いまこそ「昭和」を語るべき。写真もなかなか良し。あー、ボクたち(S30年代以前生まれ)の小さい頃はこうだったよなーとの感慨…。

だのに、なんでこんなに面白くなかったんだろう。
古い記憶自慢大会みたいになったからかなぁ、「懐かしのメロディ」的番組を見ているような行き場のなさを感じてしまった。「懐メロ」としては良く出来ている。この本の役割も価値もわかる。だが、このふたりの書き手を擁しておいて「懐メロ」に終わらせるのはもったいなさすぎるのだ。「老人のマスターベーション」に終わらせるには、書き手も題材も良すぎるのだ。惜しい。

1999年02月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 写真集・イラスト集

LV3「ニホンゴキトク」

久世光彦著/講談社/1680円

ニホンゴキトク
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「死語」もしくは「半死語」の日本語を悼み、そっと涙を流すといった風情の本。著者独特のおセンチな文体が心地よい。

ただ取り上げられているのは「辛抱」「じれったい」からなんと「さよなら」まで、全然死語なんかじゃないよなぁ、といった言葉も多い。
多分その言葉が失いつつある体温みたいなものと「変わっていっちゃう古き良き日本」とを重ねてとらえ「キトク」と呼んでいるのだろう。だからこの本は「ニホン・キトク」でもあるのだ。

相変わらずの向田邦子フェチぶりを随所で見せてくれるが、ボクもフェチに近いところがあるので、それはそれで気持ちよかった。彼女のことをこういう風に書ける人は著者の他にいないから。

1996年07月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

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