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桐野夏生

LV3「グロテスク」

桐野夏生著/文藝春秋/1905円

グロテスク
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「OUT」を超えた!という書評があったくらいなので、ホントにそうなら読まざるを得ないのだが、結果的にはボクは「OUT」「柔らかな頬」の方が断然好き。

というか、ひょっとしたら女性が読んだら印象違うのかもしれない。そのくらい今回は女性生理がストーリーに絡んでいる。
実際、何人かの女性友達が読んで「とても良かった」と言っていた。でも、オトコであるボクは最後まで「ふーん。でもさぁ…」という感じで乗り切れず、グロテスク&モンスター的視点から見ても、オトコのモンスターは(他の著者が作りだしたものを含めて)現実にも山ほどいるわけで、なんだか最後まで「それがどうした感」がつきまとってしまった。

全編、ある意味女性のグロな部分をこれでもかと描写している。それもそれぞれの登場女性の主観で描写しているので、つじつまが合ってなかったりハテナがあったりするのだが、それは演出のうち。そこらへんはとてもよく出来ているし、特に女学生時代の描写など迫真。ただし、後半の和枝の日記が主観ではなく、妙に小説になってしまってたのが惜しい。周辺描写など彼女がするわけないだろう。そこらへんにリアリティがあったらまた少し印象違ったかもしれない。

筆力はさすがなもの。会話や人物描写も実に自然。だが、下敷きにしたという東電OL殺人事件の詳細を読むと(たとえばココで)ほとんど後半のストーリーはまんまなのだなとわかる。著者なりに違う持って行き方はなかったのだろうか。

2003年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV1「玉蘭」

桐野夏生著/朝日新聞社/1800円

玉蘭
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うーむ。1999年~2000年と、著者が1999年に「柔らかな頬」で直木賞を取った頃に書かれた作品だから、ある意味脂の乗り切った時期のものであると思うし、ある意味めちゃ落ち着かなかった時期のものでもあると思う。つうか、この出来からすると、後者かも。物語は収束を欠き、カタルシスは中途に終わり、結末もちょっと凡庸。

なんというか、こういう甘美なお涙系(と位置づけてしまう気はないがなんとなく)は浅田次郎の方が適任な気がする。
桐野夏生は物事をウェットに捉えるより、キリリと締まったドライな捉え方の方が似合っているし力を発揮すると思う。思えば舞台の上海の描き方に一瞬その光芒が見えるが、ドキドキしたのはそこだけかも。過去と現在の切り返しももっと短くカッティングしていけば独特のドライな雰囲気になった気がするが、半端な切り方になってしまったため、ボクには冗長な後味が残ってしまった。
直木賞を取っても、新しいものを目指す心意気は素晴らしい。けど、こっちではないと思うなぁ。次作に期待。

2001年06月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV3「顔に降りかかる雨」

桐野夏生著/講談社文庫/619円

顔に降りかかる雨
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著者が1993年に発表した推理小説。第39回江戸川乱歩賞を受賞している。

「OUT」で新境地を開く前に創出した主人公、村野ミオが活躍するシリーズの第一作で、その硬質な文体や人物の造形の仕方など現在の著者の原点を見る思いがする。でも「OUT」や「柔らかな頬」と比べては可哀想なのだが、やっぱりちょっと劣るなぁ。筋的にも文章的にも。特にストーリーの持って行き方。プロット自体は悪くないと思うのだけど、なんで読後にこう満足感がないのだろう。

なんというか、ストーリーを破綻がないように精緻に作り上げて、それをハードボイルドな文体で装うのに腐心した、という感じ。感心はするけど感動はしない。主人公の心の襞がもうひとつ描き切れていないからかもしれない。いま同じストーリーで書き直したら全然違うものを書くだろうな、桐野夏生。

1999年11月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV2「錆びる心」

桐野夏生著/文藝春秋/1333円

錆びる心
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1997年の冬に出た短編集。

初出が94年から97年夏な短編たち。
名作「OUT」が97年7月発売だから、ちょうど「OUT」を書いている頃に書いていたわけですね。
うーん。「虫卵の配列」とか「羊歯の庭」とか面白いものもある。が、面白くないのも半分くらいある。まだレベルが確立されてない頃なんだろう。この著者がこのあと「OUT」だの「柔らかな頬」だのを書き上げるとはちょっと想像つかない部分もある。

たぶん「さすがにうまいな」と構成でうならせるような短編作家ではないのだ。それよりもディーテイルの積み重ねで語り尽くす長編作家なのだろう。切りつめるよりも膨らませる方がうまいタイプの人。とりあえず現在はそうであるようである。

1999年10月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「柔らかな頬」

桐野夏生著/講談社/1800円

柔らかな頬
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名作「OUT」から2年。相変わらず見事な内面描写で桐野夏生が帰ってきた。

そのリアリティ、そのストーリーテリング、行間から溢れてくる匂い・色彩、どれをとってもさすがなものである。
特にうまいのは「照明の使い方」。驚くほど陰影に溢れた場面が読んでいる目の前に展開する。これは「OUT」から一貫したボクの印象だ。今回まいったのは病気の内面描写。読んでいるこちらまでが胃の当たりが重くなる胃癌の症状描写など絶品である。病は気から、だとすると、これを読んで病気になる人が出るのではないかと思ってしまうような描写力だ。あ、肉欲の内面描写もすごかったな。

「OUT」同様、これも「脱出」をテーマとしている。
脱出と解放、孤独と自由。そこに死期近い元刑事のイマジネーション、そして追いつめられた主人公のイマジネーション、女親子三代の業の移り変わり、が濃厚にからんでくるあたりが圧巻だ。いくつもの結末の付け方を提示しつつ、幻想と現実の境目が消えていく。どこから脱出するべきなのか、わからなくなってくるところの描き方の素晴らしさ。また、最後の最後の「脱出」も呆然たるものがある。

個人的には直木賞確実だと思う力作。題名がちょっと甘いのが気になる以外はすべてに傑出した一冊である。

1999年06月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「OUT」

桐野夏生著/講談社/2000円

OUT(アウト)
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なぜ直木賞をとれなかったのか、と不思議な気持ちになる。いったい審査員は何を見ているのだろうか。

確かに警察の追及部分は甘いし、男が復讐していく過程の心の動きももうひとつ突っ込みが足りないかもしれない。
だが、主婦が死体を解体するに至る「寂しさ」はとてつもないリアリティで書かれているし、各登場人物たちのキャラクター造形・リアリティもまったく見事。情景描写も簡潔かつ充分かつ異様なリアリティ。ストーリーテリングも上出来だ。こういうイマな本に直木賞をあげないと、そのうち日本レコード大賞みたいに全く権威がなくなっちゃうんじゃないだろうか。

欲を言えばエピローグが弱すぎるかも。こういうエピローグならないほうが良かったのではないだろうかとちょっと思ったけど。

1998年02月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

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