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LV2「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」

江國香織著/集英社/1365円

泳ぐのに、安全でも適切でもありません
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第15回山本周五郎賞受賞作品。直木賞の候補にもなったが、取っちゃったらどうしようかと思ったよ。

って、別に著者がきらいなのではない。時間の切り取り方が見事だし、そのかけがえのなさ、他の誰でもなく自分こそにそういう時間が流れているのだという誇らしさと切なさ、みたいなものを書かせたら当代一流だとは思っている。
本作でも、表題作や「うんとお腹をすかせてきてね」「サマーブランケット」など、彼女にしか書けない時への愛おしさに溢れており、思わず本を閉じてぼんやり中空に目を漂わすようないい時間を過ごせた。

でも、なんだろう、透明すぎる。ボクには。
この透明感から、敢えて言うならば「イマではない」という印象を受ける。ある時期の村上春樹やわたせせいぞう、そしてトレンディドラマで使われた手法にスパイス振って上手に調理しなおした印象が抜けないのだ。そしてボクは(40代という年齢もあるのかもだが)そこに実在(リアリティ)を感じられなくなっている。このごろのTVドラマにもそれは言える。頭で考えて構築したことの限界、みたいな手触り。読んでいて、どうしてもそこが引っかかった。

2002年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV1「"全身漫画"家」

江川達也著/光文社新書/700円

“全身漫画”家
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人気漫画家江川達也が、その半生とどうやって作品を生みだしているかを自らが語った本である。

「BE FREE」「まじかる☆タルるートくん」「東京大学物語」「ラストマン」など、ヒットを連発する漫画家が自らその創作の目的ややり方を明らかにしたいう意味では、ファンにはたまらない本かもしれない。ボクもファンの端っこにいるので、それなりに楽しんだ。

ただ、帯にあるような「超人気漫画家の発想はわれわれとどこがどう違うのか」とか「彼の創造の源泉はどこにあるのか」とか「江川流売れる漫画の極意満載」とかみたいなのを期待すると裏切られるだろう。
取材・執筆・構成は別の人(鈴木隆祐氏)がやっていることもあって、きっちりそこら辺まで詰められた本にはなっていない。江川達也自身が一人称で自分のアピールを書くのと、誰かが三人称で評伝・評論として書くのの中間を選んでしまったことがちょっと中途半端に終わってしまった要因かな。これではインタビュー記事以下にしかならない。インタビューにおけるインプロビゼーションすら起こらない。ちょい残念。

2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 漫画

LV3「ファストフードが世界を食いつくす」

エリック・シュローサー著/楡井浩一訳/草思社/1600円

ファストフードが世界を食いつくす
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アメリカでベストセラーになった本である。
マクドナルドに代表されるアメリカの巨大ファストフードチェーン産業が目指す「世界中同じ味」「安価であるための効率至上主義」の経営方針が、伝統的な食文化や多用な農業形態を壊し、食の工業化を招き、産業構造自体を破壊し、他国の文化をも破壊していく過程をじっくりと描いて、読者に戦慄を与える本だ。

マクドナルドやケンタッキーがいかに生まれいかに大きくなったかの伝記的部分はわりと面白い。
そしてそれが目指す効率主義のため、食が工業化されていく実態、食肉処理場の劣悪かつ不衛生な現状、人間の労働環境を根底から変えるシステムの是非、フライドポテトに使われる天然香料のウソなどが、どんどん白日の下に晒されていく。そして、ファストフードが安価であることのカラクリも見えてくる。見た目は安価だが(だって65円だもん)、肥満解消にかかる費用や医療費、廃棄物が川や海を汚し牧場が森林をなくしていくことによる環境破壊による負の費用など、社会が負担するコストの高さも明らかにしてくれる。

問題意識を喚起するという意味においてこの本は素晴らしい。ただ、後半、問題点が分散してしまい、印象が散漫になってしまった。導入はいいのに詰めが甘い。題材はいいのに収束点がぼやけている。話題性十分なのにイイタイコトが伝えきれていない。せっかくいい本なのに~と地団駄踏みたくなる。また、巨大ファストフード産業がやったイイトコロももっときっちり評価して、そのうえで冷静に結論を導いて欲しかった。と、いろいろ惜しい本だけど、興味がある方にはとっても面白いと思う。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 食・酒 , 時事・政治・国際 , 健康

LV5「グリッツ」

エルモア・レナード著/高見浩訳/文春文庫/620円

グリッツ
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なんとなく読まずにいて、なんとなく気になっていたエルモア・レナードだが、あるきっかけがあって三冊購入。そのうちの一冊。
まぁ代表作と言っていいのかな。原著は1985年だからかなり古い警察小説だが、これはなかなか面白かった。主人公や犯人の描き方がとっても良い。レナード・タッチ、と巷で言われるほど特徴的とは思わないのは2001年の読者だからかな。もうこれはこの15年でマネしつくされたタッチなのだろう。そういう意味では新鮮さはないが、充分楽しめる作品。

グリッツとは「安っぽくて金ぴかの」みたいな言葉。カジノの街アトランティック・シティのことだ。プエルト・リコからそこにわざわざ飛んでいく主人公の気持ちがいまいち掴めないまま物語が進むのがちょっと居心地悪いが、犯人が変に輝いているので気にならなかったりもする。この、犯人が変に輝く感じがなかなか良い。変質者の主観描写が素晴らしい。

2001年10月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV1「野獣の街」

エルモア・レナード著/高見浩訳/創元推理文庫/780円

野獣の街
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「グリッツ」はなかなか面白かったエルモア・レナードだが、こっちはボク的にはイマイチだった。でもこっちの方が代表作に取り上げられること、多いんだね。うーむ。犯人のキャラ造形とかはこっちの方が上かなぁ。でも「グリッツ」の犯人の変な輝きみたいなものがない気がするなぁ。
ちゅうか、全体に印象が薄い。この本。読み終わってたったの数週間だけど筋が思い出せないよ。いや狂牛病に冒されているのかと心配になるくらい思い出せない。困ったな。別に困らんか。

2001年10月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「ストライク・ゾーン」

ジム・バウトン、エリオット・アジノフ著/村上博基訳/文藝春秋/2286円

ストライク・ゾーン
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新年早々大傑作にぶちあたってしまった。
洒落ていて人生が詰まっていてスリリング。筆も見事に抑えが効いていて淡々とした中にぎっちり興奮を詰め込んでいる。

うまいなぁ。野球の物語なのだが視点が良く実に楽しめるのだ。書いているのはある日のたった1試合の出来事。ここに非常に濃いドラマが隠されているのだがこれが結末までオチがわからず夢中になること請け合いだ。

単に筋がよく出来ているだけの本ではない。濃厚な人生を詰め込んでいる。でいて読後感は明るくさわやか。元気になる。こういうのを読むとこの頃の日本文学は暗いばっかりでつまらないなぁと思ってしまう。上質のエンターテイメントがまだまだ少ないよねぇ。

また、装丁もGOOD。
ちなみに著者はふたりだが、これはどちらかがアイデアマンでどちらかが執筆者というところなのだろうか。

1998年02月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV4「ベートーベンの耳」

江時久著/ビジネス社/2000円

ベートーヴェンの耳
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ベートーベンの耳は聞こえていた!

二重構造を持った本で、基本的には著者の難聴者としての半生記。
聴覚障害者の生活を迫真の記述で読ませる。そしてそれと並行して、ベートーベンの耳についての推理が進行していく。

楽聖ベートーベンは実は耳硬化症(著者の病気)であって人の声は聞こえにくくともピアノやオーケストラの音は聞こえていたのだ、ということを自らの経験を元に読みといているのである。たいへん興味深かった。「ベートーベンは耳が聞こえなかった」という史実に何の疑問も挟まなかった自分が情けない。全く聞こえなかったはずがないのだ。

まぁベートーベンに興味がなくても聴覚障害者の実感部分を理解するために読んで欲しい本ではあります。

1997年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:音楽 , 自伝・評伝 , 健康

LV0「夢ワイン」

江川卓著/講談社/1500円

夢 ワイン
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ワイン・マニアならいざ知らず、一般の人は読まなくてもいい本かも。

優れた野球人だった著者に対して何の偏見もない。ないからこそ平明な気持ちで読んだのだが、その内容のなさに唖然とした。作文的文体については何の文句もない。ただ、もっと著者独特の視点でワインを語っているのだと思っていたのだ。「ワインをこういう風に好きになって、こういう風に飲んできて、こんなに高いのもいっぱい飲んで、こんな名誉も受けたよ~」というだけの本。別に「自慢」が嫌なのではない。それがどうした!だからなんだ!としか言い様がないのが嫌なのだ。こういう人に「名誉ソムリエ」を与える日本ソムリエ協会っていったい、という印象が最後に残ってしまったなぁ。残念。

1997年07月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

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