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LV4「葉桜の季節に君を想うということ」

歌野晶午著/文藝春秋/1857円

葉桜の季節に君を想うということ
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2004年度の「このミステリーがすごい」第1位、「本格ミステリ・ベスト10」第1位な作品。

まぁひと言で言うと「やられた!」である。
400ページ超の長編なのだが、最後の方まで読者を見事に騙してくれる。この新機軸な騙し方自体がこの本のすべてと言っていいと思う。ここまで読者を騙しきったということ自体が「ミステリー」なのだ。すばらしいと思う。

ただ、読者を騙しきることが目的なので、設定や登場人物の描き方にいろいろ制約が生まれ、いろんな不具合も生じている。一番大きいのはヒロインの心情が描き切れていないところかも。小説的に考えるとそこの書き込みがないと物語に入り込めないのだが、そこを書き込むと読者を騙す鮮やかさが欠けてしまう、というジレンマ。難しいところだ。

「これだけ引っ張ってこの騙しかよ!」と不満に思う人もいるだろうし、「このように鮮やかに騙されるのなら文句はない」という人もいるだろう。ボクはどっちかというと後者。強く印象に残る一冊となった。

2004年02月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV4「いったい、この国はどうなってしまったのか!」

魚住昭・斎藤貴男著/NHK出版/1700円

いったい、この国はどうなってしまったのか!
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憂国の書というより憂マスコミの書である。
だから題名はストレートに「いったい、この国のマスコミはどうなってしまったのか!」の方がキャッチーだし扇情的だしずっと内容に近いと思う。もちろん国民や国の政策も憂えているのだが、それらの原因をメディア報道としている部分が多く、マスコミの功罪という切り口でまとめてしまった方がずっとわかりやすく読者の胸にささると思うのだ。そして、マスコミに従事する人々に直接届くメッセージになったはずなのである。題名で一般化してしまったのがちょっと悔やまれる。

著者はふたりとも元マスコミ記者で現フリージャーナリスト。だからこそ同業の裏がわかり、偽善に満ちたマスコミ報道を厳しく指弾し、同業なら見えているはずの重要問題点を看過する彼らを憂うことができる。ただ、憂えた先に、大いなる諦めと絶望しか見えないのが気に入らない。がんばらなきゃ、と自分を励ましつつ、その奥に自己憐憫的諦観が読者に見えてしまう。だからとてもイイコトを伝えてくれているのに、読者も一緒になって虚無感に苛まれ、大いなる諦観に酔っていってしまう。刺激的な本だからぜひいろんなヒトに読んでもらいたいと思うが、嘆くだけで終わっているように読後思えてしまうのがただただ惜しい。

2003年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV3「9990個のチーズ」

ヴィレム・エルスホット著/金原瑞人・谷垣暁美訳/ウェッジ/1200円

9990個のチーズ
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妻がチーズ関係の仕事をしているせいか、題名を見てなんとなく買ってしまった本(帯に「柴田元幸さん推薦!」とあったのも影響しているが)。実はベルギーの古典として知られる本らしく(現代は「チーズ」)、1933年出版という古いもの。それがなぜ今出版されたのかはしらないが、なにやら妙に味わい深い本だった。

物語は、地道なサラリーマン生活をしていたラールマンスがひょんなことから大量のチーズの輸入代理責任者になり、大金持ちになる夢を見て奮闘するというもの。結末は「幸せは足元に転がっている」的な、いかにもな教訓なのだが、古い作品のせいか、非常にのんびりのほほんとしていて、逆に楽しい。そうそう人生の本質って実はそうだよね、とにっこり本を閉じたくなるような、そんな本。ちょっと仕事に疲れた人なんかにはなかなかいいんじゃないかな。薄い本だし。

2003年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV5「スコット・リッターの証言 イラク戦争〜ブッシュ政権が隠したい事実」

ウィリアム・リバーズ・ピット+スコット・リッター著/星川淳訳/合同出版/1200円

イラク戦争―元国連大量破壊兵器査察官スコット・リッターの証言 ブッシュ政権が隠したい事実
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帯に「イラク攻撃は前代未聞の愚行だ」とある。
アメリカ人の元国連査察官で長くイラクを査察したスコット・リッターが書いた薄い本だが、内容は戦争に傾きつつあるアメリカ(というかブッシュ)の暴走に警鐘を鳴らしてあまりある。なにしろ査察官自身が自信を持って「核兵器は議論の余地なく廃棄され、化学兵器や生物兵器も破棄され、残っているとしてもすでに用をなさない」と言い切っているのである。それも実に冷静沈着かつ「発言を裏付ける文書を持って」である。そのスタンスは戦争反対論者というより科学者のそれである。そしてきちんと愛国者である。アメリカを愛するがゆえの告発だ。胸に響く。

特に41ページから始まる、ピットによるリッターのインタビューは圧巻。
チェイニー、ラムズフェルド他がどれだけ薄弱な根拠に乗っ取り、さまざまなことをごまかしているかがよく見えてくる。また、ハディル・ハムザ、リチャード・バトラーたちの大嘘にも「裏付ける文書を持って」反論している。ここらへんの「体制側による情報の作られ方(メディア・コントロール)」は背筋が寒くなるほどである。まさに「ブッシュ政権が隠したい事実」であろう。

リッターの言っていることが事実なのかどうかの検証資料をボクは持っていない。が、詳細に読んでいっても、論説は実に明解で反論の余地がないように思える。今回のイラク攻撃について少しでも思考しようとする人は、まずこの本を読むべきだ。そして客観的に眺めてみることだ。たった120ページの薄い本だが、これだけで充分じゃんと思うくらいブッシュの論理を打ち破っていると思う。

2003年02月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV3「私の部屋に水がある理由」

内田春菊著/文春文庫/552円

私の部屋に水がある理由(わけ)
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1993年に出た単行本の文庫化。
まぁずいぶん前の本ですね。題名が素敵なのと、久しぶりに著者のエッセイが読みたくなって買った。いくつか記憶があるエッセイがあるのはたぶん週刊文春に連載時のものだろう。本音で書く人は多いが、その本音の出し方が当時はわりと「目うろこ」的だったので印象深いのだ。そう、あれからこういう春菊タッチで書く人は増えた。ある意味、室田滋とかもそうかもしれない。

個人的には、常識に縛られている人生のつまらなさをよくわからせてくれるところが好きである。
常識って何なのさ。それにがんじがらめにされているボクって何なのさ。いや、著者に常識がない、という意味ではなく、彼女は実に平明に人生を見ている、ということ。あー、滑稽だろうな、そういう目で見ていたら。環境の違いもあるが、心底うらやましいのである。つうか、オレも見習おう。
あ、それと、文体も視点も違うが、その「人生を平明に照射する感じ」が菜摘ひかるに通じるものがあるとちょっと感じた。

2000年08月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV4「クラシックCDの名盤」

宇野功芳・中野雄・福島章恭著/文春新書/880円

クラシックCDの名盤
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久しぶりに読んで楽しい名盤案内が出た。
いや、読んで「楽しいように作ってある」名盤案内は他にもあるか。エッセイ風にしたりお笑い風にしたりマンガを入れたり…。でもそういうのが楽しかった試しがない。そういう意味の楽しさではなくて、この本のいいところはそれぞれ個性と一家言ある書き手が一曲についてそれぞれベストのCDを挙げ、対抗しあっているところ。対話形式ではなくそれぞれ独立したコラムなのだが、たぶん書く順番を決めているのであろう、最初に書いた人の選択を批判したり後に書く人の選択を牽制したりされておりなんだか楽しくなるのだ。

例えばメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲など、中野氏が一番最初に書いたのを受けて宇野氏が「なんじゃアレを紹介しないのならワシがする」とばかりに書くものを変更しつつ「福島氏はチョン・キョンファか」と牽制する。福島氏は「はずれてすいません」とクーレンを推薦する、といった具合。

もちろんバッティングしないものを紹介する場合も多いが、それぞれに曲への捉え方、選択の基準、自宅で使用しているオーディオ機器によって演奏の好き嫌いが変わってくるところなどいろいろ見えて、それなりに知っている人には非常に楽しい名盤案内だろう。そんなに詳しくないボクでもかなり楽しめるし、いろいろ聴いてみたくなる。あー、しばらくはクラシックにもはまりそうだ。

1999年12月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:音楽

LV2「トウキョウ・バグ」

内山安雄著/毎日新聞社/1600円

トウキョウ・バグ
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2段組400ページ弱の長編だが、あっと言う間に読める。そういう意味ではストーリーテリングの力を認めざるを得ないが、前に読んだ「モンキービジネス」に比べるとちょっと内容が薄っぺらい気がした。まず主人公にカタルシスを感じられないのが痛い。相も変わらず情けない主人公設定なのだが、その情けなさに気持ちがうまく入っていけないのだ。共感しにくい。

在日イラン人やタイ人などの描写は面白いのだが、どの登場人物にも共感できていかないのがまた惜しい。
著者が彼ら側に立っていそうで立っていないのも中途半端感がある。「モンキービジネス」の方が全体に一貫性があって面白かった。いや、ストーリーテリング自体はいいんだけど、ちょっと惜しい感じ。脇役のキャラがいいのが救い。

1999年06月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV2「フランス美味の職人たち」

宇田川悟著/新潮社/1400円

フランス 美味の職人たち
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雑誌「danchu」に連載されていた「フランス食ものがたり」を一冊にまとめたものである。

どうもフランスものは気取った題名・文体になってしまうようで、それがボクはいつも気になる。書いている内容はとてもいいのだが、全体に「高級でスノッブな香り」がだだもれしてくるのだ。もちろんそれを望む読者もいっぱいいるのだろう。でも十年一日のごとくそれなので、少なくともボクは飽き気味。な

あ、ここまでは一般論含む。わりと著者の本は読む機会が多いが、この本は嫌いではない。著者も嫌いではない。よく取材して書いてある。が、まぁ、上記のような文句がやっぱりあるのである。どうにかこのへんの「常套内容」を打破してほしい。

1998年09月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV5「モンキービジネス」

内山安雄著/講談社/1900円

モンキービジネス
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面白い。いい意味で三文小説だ。日本ではちょっと珍しい。だからうれしい。

フィリピンを舞台にしたビジネスものだが、小難しい理屈は全くなく文句なく楽しめるのだ。
まぁストーリーテリングだけの小説なのだけど、それに撤しているだけあって実に上手に読者を引きずり回してくれ、時間を忘れさせてくれる。なにせ主人公の名前が長流(おさる)だからねぇ。こういう安っぽい大衆小説を待っていたのだなぁ。いや、マジで本当に褒めてるんです。

まぁある意味で著者は開き直っているみたい。
こういう本が売れたりしたらそれ自体がモンキービジネスだということなのだな、きっと。

1997年12月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

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