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浅田次郎

LV5「壬生義士伝」

浅田次郎著/文春文庫/上下各590円

壬生義士伝 上   文春文庫 あ 39-2
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いつからか、あんなに好きだった浅田次郎を読まなくなった。「鉄道員」あたりからかな。ひと言で言うと食傷した感じ。もうひと言言うと泣かせがあざとくてちょっと困っちゃった感じ(著者のは明日への希望がわくタイプの泣かせではあるのだが)。
で、久しぶりに読んだ浅田次郎。ネタが新撰組であるのが読んだ理由のすべて。なにしろ中学以来の幕末フェチであるボクだもの。でも、そう思いながら文庫になるまで読まなかったのだから、よっぽど食傷してたのね、浅田次郎に。

さて、久しぶりに読んだ感想はというと……さすがと言うしかないなぁ。
まぁうまいのはわかっていたのだけど。それにしても、だ。方言の一人称語りだけで、幕末の空気から新撰組の真実から人の道とは何かというテーマまですべてを描ききるこの筆力はどうだ。先人が掘り尽くした新撰組という鉱脈に堂々と挑み、新たな命を吹き込んで余りある。斎藤一を描きこみ坂本龍馬暗殺に新解釈(?)を与えただけでも幕末フェチとしては評価する。時代の変わり目を捉え、昭和・平成の現代までつなげ、現代人が失いつつある「日本人の精神性」までしっかり感じさせたその野心もすごい。いやはや。やっぱり浅田次郎は抜群だわ。

2003年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:歴史小説

LV4「満天の星 〜勇気凛凛ルリの色」

浅田次郎著/講談社/1600円

満天の星―勇気凛凛ルリの色
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週刊現代に連載していたエッセイ「勇気凛凛ルリの色」の四巻目にして完結版。
「鉄道員」以来どうにも作風・方向に納得行かない浅田次郎だが、エッセイは三巻目の後半から復活していて、とても充実したものだったから終了はちょっと残念。

このエッセイ集の中に「ひとりでも多くの人に、小説を読んでほしい。むろん私の小説を、という意味ではなく、テレビも映画もいいが小説という娯楽を持ってほしいと思う」「『読む人だけが読めばよい』という作家の姿勢は小説をいずれマニアックな、特殊な文化に変形せしめる」「すぐれた芸術は常に大衆とともにあり、そうした普遍性のない芸術はまがいにちがいないからである」といった展開がある。
彼が一部古参浅田ファンや評論家に誹られながらもお涙頂戴的極甘小説を書き続ける理由がやっとわかった。彼は直木賞作家として小説を復権させるため、わざと「大衆に求められるもの」を書き続けているのだ。

そしてそれは成功しつつある。うちの母まで読んでいる。すごいことだ。
彼の感涙小説を酷評ばかりしたボクだが(そしてこれからも急に評価をあげることはないかもしれないが)、そのことについてはめちゃくちゃ認めます。偉い、浅田次郎!

1999年03月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV2「霞町物語」

浅田次郎著/講談社/1500円

霞町物語
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帯とか広告で「著者自身の物語」と書いてあるのを読まなければもっともっと楽しめたかも。

非常に良く出来た青春の1シーンなのだが、「主人公=著者」と思って読んでしまうと白けてしまうのだ。やることなすこと格好良すぎる。よく自分でこんなの書けるなぁ、と逆に感心してしまう。含羞がなさすぎてちょっとついていけない部分がある。祖父や親父を描いたところはとってもいい。が、彼自身の描写になると読んでいる方がこそばゆくなってくる。

うまいんだけどなぁ。でもこれは、自分の半生を自分に酔いながら歌いあげる演歌歌手と変わらない。いろいろなエピソードは心に残るのだけど…。

1998年10月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 小説(日本)

LV2「見知らぬ妻へ」

浅田次郎著/光文社/1500円

見知らぬ妻へ
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おーい、浅田次郎さーん、どこ行っちゃうのー!と叫びたくなる一冊。

「鉄道員」の流れを汲む泣かし短編集なのだが、泣かしってこんなに安売りしてしまっていいの?となんか居心地が悪くなる部分がある。時代的にこういうものが求められ、また、著者も求められるままに必死で書いているのだろう。ボクがケチつけることもないのだが、なんというか、その、筆が荒れないだろうか。

歌がうまい歌手がそのうまさを誇示した歌い方をするようになると、聴いている側としては鼻につきだすものである。ビブラートをきかせすぎたりすると歌が安くなっていく。で、その安い癖は簡単には取れなかったりするのだ。
なんかこの頃の著者はそんなことを思わせる。いくつかはとてもいい短編はあったし、涙するものもあった。でも、浅田ファンとしては物足りない。というか、そっちにあまり行って欲しくない思いである。個人的に。

1998年08月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV3「日輪の遺産」

浅田次郎著/講談社文庫/733円

日輪の遺産
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浅田次郎がまだ無名だった頃の旧作である。極道小説以外では初の長編で、いわば浅田次郎の原点的な作品だ。

いまの浅田次郎の技を知っている読者たちにとってはずいぶん稚拙に思える展開と書きっぷりで、同じ原点としても極道小説の原点「きんぴか」には遠く及ばない。それでもまぁ十分面白いあたりがサスガですね。独特のウェットさは見事なものだ。
しかしこれと同じ題材をいまの浅田次郎に与えたら、かなり泣けるものを書くだろうなぁ…。今度は沖縄系の話を書き起こしてくれはしないだろうか。

1998年04月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV4「福音について」

浅田次郎著/講談社/1600円

福音について―勇気凛凛ルリの色
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週刊現代連載中のエッセイ「勇気凛凛ルリの色」の第3巻である。

既刊に比べて身近な話題が多く、浅田次郎の世の中への目線を知りたいボクなんかにとってはちょっと食い足りない部分もあった。でもちょうど直木賞をとったあたりの連載が載っているのでなかなかに臨場感はある。新しくひとりの文豪が出来上がっていく瞬間瞬間のシズル感がとてもいい。まぁこれは作者の狙いではないだろうが…。
贅沢を言えば、既刊にあったような例えば沖縄に対する独自の見方みたいなエッセイをもっと読みたい。オーバーワークで大変だろうけど.。

1998年04月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV3「珍妃の井戸」

浅田次郎著/講談社/1600円

珍妃の井戸
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アポロン的大傑作「蒼穹の昴」の外伝的位置づけか。「蒼穹の昴」に登場した人物がその人物造形のままにあらわれるので「蒼穹の昴」を読んでいない人にはいまひとつ楽しめないかもしれない。

相変わらずの浅田浪花節で快感に導いてくれる。
が、著者が読者よりも先に泣き叫んでしまうので、読者はちょっとひいてしまうところがある。この頃このパターンが多いかも。「泣かせ」に自信を持ちすぎているのかなぁ。必要以上にビブラートをきかす演歌歌手みたいなところがある。ちょっと惜しい。

物語的には4人の貴族たちが珍妃殺人の調査に乗り出す動機がもうひとつ弱い気がする。
貴族がそんなことするだろうか? 最後までそれに対する違和感が残った。

1998年02月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:歴史小説

LV3「月のしずく」

浅田次郎著/文藝春秋/1429円

月のしずく
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小説が心のマッサージであるならば、こういう「泣かせ」狙いは決して間違っていない。日々の生活にほんの少し潤いを与えてくれる。忘れそうになっていた何かを取り戻させてくれる。

だが、本来それはスパイスとして効いてくるべきもので、その狙いがモロに見えてくると鼻につくものだ。泣かしのド演歌が聞いていて辛いのと一緒。狙いはわかるが読んでいて辛い。「鉄道員」でこの系統は打ち止めして欲しかった。

いい話は多いのである。もう少し構成を淡白に、さらりと書いてなおかつ泣かせて欲しい。こういう書き方をしていると著者はここで終わってしまう気がする。そんなにヤワではないとは思うが、でも、ちょっと心配。

1997年12月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「きんぴか」

浅田次郎著/光文社/1942円

きんぴか
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著者の初期の傑作。
浅田次郎のすべてがあると言ってもいい。まだ明日をも知らぬ作家であった彼は惜しげもなく様々なネタをこの中にぶち込んでいる。ここから上手に抽出すれば長編が5篇は出来るのでは、というくらいな物だ。

かつては光文社ノベルズ3巻で出ていたらしい。
そう、内容的にはまさにノベルズがお似合いなのだ。ハードカバーになってもその下世話な魅力は少しも衰えず(まぁ内容は一緒なんだから当たり前だけど)一気に読ませる。主人公達は超魅力的。この物語が終わって、彼らと別れるのが非常に辛くなるほどであった。
展開は荒唐無稽ながらも読者を惹きつけて離さない。著者は「センセイ」にならずにこういうエンターテイメントをもっと量産して欲しいと思うのである。

1997年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「活動寫眞の女」

浅田次郎著/双葉社/1700円

活動写真の女
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直木賞作家受賞第一作というふれ込みだが、実際には受賞する前の96年に連載していた長編である。
霊をモチーフに「哀しき人間の業」「現実という虚構」を描く手法はますます磨きがかかっており、安心して著者の世界にどっぷり浸かっていられる。こういう安心感は得難いものだ。

今回は題材である映画がまず非現実のものである上に、途中に著者自身の口上まで入り、いよいよ現実と非現実の境目を曖昧にしている。新鮮。読んでいてその浮遊感にめまいがするほどだった。ただ物語の鍵を握る女性霊への共感が薄いのが残念。もっとあれば著者の注文通り泣かされてしまっただろう。

1997年09月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「地下鉄に乗って」

浅田次郎著/徳間文庫/514円

地下鉄(メトロ)に乗って
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94年に出た長編の文庫化。
「地下鉄」に「メトロ」とルビがふってある。物語の筋からするとあんまりピンと来ない題名である。

一種のタイムスリップものなのだが、同じタイムスリップものでも例えば「蒲生邸事件」なんかより深みを感じるのはこの著者はそこに必ず浪花節を入れるからである。それが鼻に付くと感じる読者もいるであろう。ボクはわりと成功していると思うし好きでもある。ただこの作品では浪花節度がちょっと中途半端であるのが残念。「天切り松闇がたり」のような浪花節を要所要所でべったり入れた方が良かったのではないか。浪花節のメリハリとでも言うのかな、それが足りない気がする。

1997年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「勇気凛々ルリの色 2」

浅田次郎著/講談社/1600円

勇気凛凛ルリの色〈2〉四十肩と恋愛
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先月に「勇気凛々ルリの色 1」を取り上げたけど、この「2」は前作以上に充実した内容で読みごたえがある。よくは知らないが、エッセイはこの一本に絞っているのだと思う。そうでなければ書けない切れ味がそこここに感じられる。

オウム問題、沖縄問題、薬害エイズ問題などの時事ものにも独特の視点、「人倫としてどうなのか」という揺るぎない視点から書かれており刮目させられる。エッセイも名手化してしまった著者はいったいどこまでいくのだろう。

1997年07月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , エッセイ

LV3「鉄道員」

浅田次郎著/集英社/1575円

鉄道員(ぽっぽや)
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著者初の短編集。
世の中では大受けしているらしい。実際、良く出来ていると思う。泣かされる話ばかりだ。名作の誉れ高くなると思う。

ただ、志水辰夫に感じる「泣かしてやるよ、ほら、泣けるだろ、な?な?」みたいな‘見え見えの狙い’がわりと感じられてしまう分、ボクはちょっとしらけてしまうのだ。ちゃんと泣かすってとても難しい技だし、それを売りにしてもいいとは思うけど、今のボクにはちょっとオーバーな感じ。もっと年とったらちょうどいいかもしれない。

浅田次郎は背景の書き込みが足りないと上滑りする作風である。「天切り松闇がたり」や「蒼穹の昴」のような背景がしっかり書き込める長編や大長編の方がそのチカラを発揮する。背景さえ書き込めれば決して上滑りしないのだが…。長編の方がボクは好きだ。

1997年07月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「勇気凛凛ルリの色」

浅田次郎著/講談社/1600円

勇気凛凛ルリの色
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週刊現代連載の浅田次郎のエッセイ集である。
ただいま絶好調の著者らしくこれもたいへん良いエッセイばかり。並々ならぬ実力をここでも発揮している。視点の明解さ。ボキャブラリーの豊富さ。そしてなにより「少なくとも読者を勇気づけることは、いやしくも言葉で飯を食う者の使命であろう」という言葉に象徴されるような著述姿勢。
もともと連載エッセイ向きな波乱万丈な生活をしている著者だ。面白くないはずがないのである。ちなみに、小説では泣かしは名人だが笑わしは下手であったが、エッセイでは笑わしもなかなか。

1997年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV4「プリズンホテル」「プリズンホテル秋」「プリズンホテル冬」「プリズンホテル春」

浅田次郎著/徳間書店/順に1400円、1700円、1500円、1700円。

プリズンホテル
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これはシリーズだが、それぞれ異なった作品ゆえ別々に取り上げるべきではある。がそうすると書評のしようもないのでまとめて取り上げよう。

結論から言うと「プリズンホテル」は傑作。
後にいくにしたがって普通になっていく印象だ。ただ1作目が傑作だから後をどうしても読みたくなってしまう。
この著者、泣かしは絶品だが、笑わしはへたくそである(泣かしに比べると、だが)。このシリーズはばかばかしい笑わしの要素が強いのでそこらへんが際立ってしまった。これで笑わしのコツでも掴んだ日には浅田次郎は大化けするかも。それにしても極道書かせたら日本一だねぇ。見事だ。

1997年05月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「天切り松闇がたり」

浅田次郎著/徳間書店/1500円

天切り松 闇がたり
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不覚にも泣かされてしまった。全く名人技。「蒼穹の昴」のスケール感はないにしても語り口はあれを上回るほどうまい。

全編「どさ回りの講談風」人情劇なのだが、鼻に付くどころかもっと読みたい読ませてくれろ、とすがりたくなる浪花節。
日本人の奥底をつつくのが上手だなぁ、この著者。
「このもっていき方イヤだな、お洒落じゃないな、臭すぎるな、え、ヤダよ、誰が感動するもんか、見え見えじゃないか、うわ、うわ〜、ぐじゅぐじゅぐじゅ……」と、必死に抵抗するも空しく撃沈されてしまう。参ったな。とっても参った。さてお次は「プリズンホテル」シリーズを読もう。

1997年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「蒼穹の昴」

浅田次郎著/講談社/上下各1800円

蒼穹の昴〈上〉
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アポロン的大傑作。
「この物語を書くために私は作家になった」と帯にあるように著者入魂の大長編である。

時は中国清朝末期。
時代の大きな変わり目に蠢く人々を実に魅力的に描きあげている。すべての登場人物のキャラが立ち上がってくる描写力と上下巻息もつかせぬストーリーテリング力。歴史小説なのだが、ノンフィクションの趣きまで入ってきて、しまいにはその境目がわからなくなる。全部事実に思えてくるこの筆力。すさまじいものがある。一度読み出せば止まらないこと請け合いだ。

「え~中国の歴史物〜? 興味ないなぁ」と言うあなたも大丈夫。絶対すらすら読めるから。そして中国に今まで以上の興味と敬意を持つようになるから。んー、それにしてもシアワセな時間だった。これに直木賞を上げなかったら審査員コロスとまで惚れた(笑)。続編が待たれる。

1996年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:歴史小説

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