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嵐山光三郎
「決定版快楽温泉201」

amazon「週刊現代」にグラビア連載していた温泉紀行が一冊になった。
写真もふんだんな実用書だが、あれを読んだことがある人はわかるだろうが単なる温泉紹介ではない。作者の視点がしっかりそこに根付いていてちょっと文学的ですらある。卓越した温泉人生論だ。
前書きに「私は大学を中退してどこかの山の湯の下足番でもやろうと考えていた。いまでも、私と同年代の湯守りに会うと『ああ、この人は私だったかもしれない』と思う」とある。『ああ、この人は私だったかもしれない』という感慨はボクの中にも常にあって、そういう感慨で温泉を見られる人の書く文章は普通以上にボクの中で響くのである。
本にまとめるにあたって「とびっきり8」という大オススメ温泉を抄出したのも感じが良い。どの温泉も結局気持ちがいいのだ、というような予定調和で終わっていないところが特に。
1999年07月01日(木) 12:00:00・リンク用URL
「文人悪食」

amazon労作にして名作。日本文学好きには堪らない本だ。
近代文学史を文士たちの食の嗜好によってたどってみようとするもので、まずその切り口に目丸。作家の食の嗜好はその作品と密接な関係があり、それを作者ごとにじっくり見ていくその労力に口開。そしてそしてそれぞれが非常に優れた作家論になっているその技に舌巻。
取り上げている作家は37人。それぞれに絶妙の作家論が展開されるが、それはそれ名手嵐山光三郎であるから、ひとつも小難しくなく読者を上手にその作家の世界にいざなってくれる。各作家ごとにかなりの文献・資料を読むせいだろう、著者の文体が微妙に違っていてそれもオマケ的に楽しめるよ。 なおこれは去年の3月初版のもの。
1998年06月01日(月) 12:00:00・リンク用URL
「温泉旅行記」

amazon残念な本だ。前半、特に第1話など「こ、これは紀行文学の新たなる傑作誕生か!?」と色めき立つほどの衝撃を持って読んだ。でもこの緊張は2話目あたりから崩れていき最後の方は「普通に面白い旅行記」になってしまった。
これはたぶんネタ(文人はなぜ温泉に泊まるか、とか、山口瞳の思い出とか)を適度に入れ込みながら書いているからだろう。著者のサービス精神のたまものであろうが、ネタなど入れずに淡々と書いたほうが結果的には良かったと思う。第1話はそれで成功している。あれは傑作である。あの調子で通してくれたら……まことに残念な本なのである。
1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:旅




