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「今日は幻があるよ」

2010年06月27日(日) 7:54:33

2ヶ月ほど前に「銀宝の天ぷら」についての記事を書いた(こちら)。

銀宝。ギンポ。ギンポウ。
別名をウミドジョウ(海泥鰌)とかカミソリ(剃刀)とか言うそうだ。それで姿形が想像つくよね。

江戸前の天ぷらとして昔から喜ばれた魚である。
江戸の前(東京湾)で捕れる、という意味でも、江戸風天ぷらのタネという意味でも珍重された。でも、最近では東京ではなかなか捕れず、能登の七尾産とか静岡産のものが多いようである。食べた店のご主人が言うには、市場に仕入れに行くと、七尾産だと「ギンポあるよ」と叫ばれ、静岡産だと「本物があるよ」と耳打ちされ、江戸前(東京産)だと「今日は幻があるよ」とこっそりささやかれる、とのことである。

旬は短い。まさしく今。5月くらいから七尾や静岡が出回り、江戸前(東京産)は6月〜7月。でも上記のように「江戸前は幻」なので、本当にめったに市場に出ないという。

さて、2ヶ月ほど前の記事で「6月、また行くよ」と書いたように、その食いしんぼの先輩と「森の」にまた行ってきた。
一応6月25日に予約を入れたのだが、その日に江戸前が入る確率は低い。なので「もし江戸前のが入ったら電話をしていただけませんでしょうか? 25日じゃなくても、なんとか行きますので」とお願いしておいたのである。そしたらちょうど25日の数日前に江戸前が入ったという電話が入った。超うれしい! まだ、以前のギンポの味が鮮烈に思い出せる状態。この状態で本場江戸前と食べ比べることが出来るとは!

本郷三丁目にある蕎麦屋「森の」は、一品メニューも日本酒の品揃えもかなりいい。神保町の「松翁」で修業したご主人が作る一品はどれもおいしい。まずは焼き茄子やら鮎の煮浸しやら江戸前穴子の煮凍やらで腹を落ち着けて、鮎酒で舌を湿らせて、準備万端。そして満を持して銀宝の天ぷらを。

いや〜、前回食べたときのような身の厚さはなかったが、香りがまるで違った!
いい意味での臭みと苦み。前回の淡白さと打って変わったエッジィな味。おー、これがギンポかー。ここまで特徴が出たものは初めて食べたなぁ。覚えとけよ、舌と鼻!

めったに食事中に写真を撮らないのだけど、店がすいていたこともあり、手に入れたばかりの iPhone4 でパチリ。いや、ほんと、ご馳走様でした。

ちなみに「森の」は夏に冷や麦もやっている。
この店の蕎麦がうまいのは前回で体験済み。なので今回は冷や麦とのハーフにしてみた。夏に冷や麦を出してくれる蕎麦屋、好きなんだよなー。そしてそういう店は決まって味もはずれない。一品などもすべておいしいことが多いのである。

「森の」の冷や麦は、コシも粘りも抜群で実にうまかった。この季節、オススメかも。

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鈴木さんの田んぼ、自遊人の田んぼ

2010年06月24日(木) 8:46:48

おととい、会社を休んで、ひとり、長野・新潟まで「田んぼ見学」に行ってきた。
雨の予報だったのだけど、陽射しが出て(これが晴れ男クオリティ)、頭頂部が日焼けした。つっぱる。剥けなければいいな(笑)

ご存じの方も多いと思うが、「自遊人」という雑誌がある。
「サライ」とかと同じ分野になるのだろうか。大人の雑誌として人気があるが、2004年、もともと東京・日本橋にあった編集部を新潟県南魚沼に移し、そこを拠点として隔月で出版している。「自遊田」という自社田んぼも持っていて、米を作って今年でもう6シーズン目になるという。田舎暮らしを口にし実践する個人は多いが、会社ごと田舎に移して、兼業農家(出版兼農家)として実践している例は少ないだろう。

その「自遊人」に数ヶ月前に寄稿したことが縁で、「自遊人」がやっている通販サイト「オーガニック・エクスプレス」で売っているお米をいくつか食べ比べる機会があった。その中のひとつ「鈴木和夫さんのコシヒカリ」をとても気に入ったこともあって、生産者である鈴木さんに会わせて欲しいとお願いをした。ではどうせなら推薦原稿を「自遊人」に書いてください、ということになり、まぁ半分「大人の遠足」、半分「取材」で、鈴木さんの元へ出かけたのである。

鈴木和夫さんのお米は「米・食味鑑定コンクール国際大会」において金賞を獲っている。
金賞レベルの農家の米をいくつか食べさせていただいたが、鈴木さんの減々農薬・有機質肥料100%使用米が一番好きだった。噛めば噛むほど甘みと香りが出てくる奥深い味で、もうずぅぅぅっと噛んでいたい感じ。そのうえ後味が素晴らしい。甘さが上品でスッキリしている上に品のいい香りが重なり、それが長く口の中でキープされる。そう、余韻が長いのである。うまひなぁ。優しい味で、最初は少し物足りない感じから始まるのだが、食べるに従っておいしさが出てきて、飲み込む寸前にうまさがピークに達する感じ。右肩上がり上向き直線系のおいしさ。

それが認められたのか、京都の名旅館「美山荘」(ボクの大好きな宿で二回泊まっている)も「鈴木さんのが日本一!」と実際に使用しているそうである。そんなお米なのである。


思わず「この沿線に住みたい」と思ってしまうほど車窓風景が美しい飯山線に揺られて長野県飯山へ。
飯山駅へは「自遊人」編集長と編集部員が迎えに来てくれ、一緒に鈴木さんの田んぼへ向かった。

実際にお会いした鈴木さんは理科の先生みたいな雰囲気の理系稲作家で、お話がすべて「理にかなっている」。とても論理的で几帳面な稲作をする。くわしいことは原稿を書き終わった後にまたご紹介したいが、特徴的なのは株間の短さ(14センチ)と、見事なまでに一直線になった植え込み。田植機を使えば誰でも直線になるのかと思ったらそんなことはなく、周りの田んぼはうねうね曲がっているのに、鈴木さんのは定規で引いたみたいに完璧な直線になっている。「いろいろコツがあるんですよね」と笑って答えていただいた横顔はもう稲作家というより職人か建築家のそれだった。

キレイに整備されたトラクタや耕うん機や田植機、コンバイン、遠赤外線乾燥機なども見せていただき、お宅にもお邪魔してお茶をいただいた。もう当分鈴木さんとこのお米しか食べたくない!と思うくらい好きになってしまった。生産者を知っていると味わいも変わるよね。うれしい出会い。常に工夫を加えていく鈴木さんのお米が今後どういう味に変わっていくか、毎年食べて体験していきたい。

鈴木さんのお宅を辞した後、新潟県南魚沼に移動して、「自遊人」が稲作をやっている「自遊田」も見学。
山間の耕作放棄3年目の田んぼを借りて、整地するところから始めた自遊田。え?と聞き返してしまうような少人数で、苦労して苦労して田植えまで漕ぎつけた、汗と涙が染みこんだ田んぼである。5月の連休にはまだ雪があったという山間部。カモシカも出没するという。うーむ、想像を絶する苦労だったのだろうなぁ。

これだけ食べることが好きなくせに、こうしてきちんと意識して田んぼを見学したのは初めてかも。
米づくりのなんたるかも知らないで、日本の食は語れないよなぁ。遅きに失したが、やらないよりマシ(←なんでもマシ論者)。来年はここで田植えや雑草取りや稲刈りを体験させてもらおうかな。とか、そんな甘いこと考えていたら、「でもね、雑草取りって、丸一日がんばって畳二畳くらいしか取れませんよ」と脅された。まぁ逆に言うと人手がたくさん必要、ということ。来年どなたか雑草取りご一緒しませんか?(笑)


最後に「自遊人」のオフィスにも遊びに行った。
窓外にホタルの乱舞が見られるロケーション。観光バスが来るくらいなホタルの名所らしい。いいなぁ。

編集長の岩佐さん曰く。

こっちに移ってきて一番びっくりしたのは、打ち合わせ時間がほぼなくなったこと。いままで際限なくやっていた外部の方々との打ち合わせが(東京との距離の問題もあって)皆無になったが、それでもほとんど困らないことに気づいた。何とかなる。そして、その結果うまれたのが膨大な「時間」。こんなに時間が創出できるとは思わなかった。これが一番びっくりした。東京にいるときは365日不夜城と言われ、忙しすぎて毎年のように身体を壊す人が出た自遊人編集部だが、いまでは農家兼業で健康的にやっていける。これはとても大きな変化。
素晴らしいなぁ。
実際、ネットと電話を駆使すれば、(業種は限られるとは思うけど)仕事なんてある程度できる。膨大な時間の創出か。「お金持ちより時間持ち」。人生において実に大切な考え方。

とにかく、理想や空論を語るだけでなく、実際に行動に移し、曲がりなりにも軌道に乗せていることに敬服する(経営はかなり厳しいらしいが)。こういう先駆者が大きく成功することが、後進への道を開く。応援したいと思う。

ということで、雑誌「自遊人」と通販サイト「オーガニック・エクスプレス」。みなさんもちょっと見てみてくださいね。

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5年ぶりの小柴のシャコ

2010年06月19日(土) 12:36:23

先々週の7日、荒木町の小さな鮨屋で小柴のシャコを食べた。江戸前のシャコを食べるのは実に久しぶりである。

江戸前(文字通り東京の前の海という意味)のシャコは小柴産が一番と昔から言われている。小柴というのは八景島シーパラダイスのすぐ近く。漁港名としては柴(しば)漁港となる。あの辺で揚がったシャコが珍重されているわけですね。

数年前、ボクは小柴と野島に小旅行した。
その模様は「寿司ネタ産地へ小旅行」で読める。鮨好きには意外とオススメの小旅行。産地の景色を具体的に知っているだけで鮨屋のカウンターが数倍楽しくなること請け合いなのだ。タネが身近になるのが一番の効用だが、他にも、「小柴のシャコです」とご主人に言われて出されたときに「あぁ、行ったことあります。港の真ん前にあるパン屋のシャコパンが意外とおいしいんですよね♪」とかニコニコ話すことが出来るとか(笑)。まぁ他にお客さんがいるときにこれをやるとわりと恥ずかしいので注意が必要だけど。

小柴のシャコ、実は乱獲の影響で5年間も禁漁になっていた。ニュースでご存じの方も多いと思う。
それが5年ぶりに復活しかけているわけですね。例によってリンク切れを避けるため、ニュースを一部引用してみる。

横浜市にある柴(しば)漁港の漁師たちが、江戸前のすしダネとして珍重される特産のシャコ漁を、5年ぶりに復活させた。漁獲量が急減し、禁漁を続けていた。「海を休ませれば、答えを返してくれる」と漁師は沖に向かう。江戸の食料庫だった東京内湾は、都市生活と隣り合わせ。環境の変化の波をうけながらも、とりすぎない漁業で生き延びようとしている。
(中略)
東京湾のシャコの大半は柴漁港に水揚げされる。小型底びき網でとるシャコ漁は、組合の稼ぎ頭。2操1休(2日海にでたら1日休む)の漁で、市場価格と資源を安定させた。だが、海からシャコが消えていく。小さなものは逃がすよう網目を大きくし、禁漁区も設けたが回復せず、海を休ませて待った。対岸の千葉・富津にも小さいシャコをとらないよう求めた。
県は4月の資源調査で「完全復活には遠い」と分析。組合は「いつでもブレーキを踏む」と決めて再開した。
(中略)
江戸前アナゴでも「とりすぎない」漁業は10年前から続いている。長い縄に塩ビ管の仕掛けをつける筒漁で、幼魚が逃げるように水抜き穴を大きくした。柴の漁師、斉田芳之さん(54)は「売りたいサイズのアナゴだけをとり、翌年の分は残す」。この漁法は神奈川県水産技術センターの元研究員清水詢道(たかみち)さん(64)が指南し、千葉、東京の漁師へも広がった。「漁師同士が連携したことに意味がある。東京湾は、ひとつなのですから」
この記事が出たのが5月29日。ボクが食べたのがその一週間半後。たぶん都内まで出回ってきた初期出荷の中のひとつをいただけたのだと思う。甘みと香りが印象的な江戸前シャコ。稀少品だと思うから味もぐぐっとよく感じる。おいしかったなー。

鮨ダネは時代とともに移り変わるし、それは仕方ないことだとは思う。
でも、シャコやアナゴ、マグロなどが高嶺の花になっていくと、鮨の魅力がどんどん減っていくのも確か。たまに楽しめればそれでいいから、これからも細く長く、死ぬまで楽しめるとよいなぁ。

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甘エビの燻製!

2010年06月18日(金) 18:54:54

先週の札幌でのこと。
一緒に行ったレストランで、ライターの小西由稀さんと鹿取みゆきさんがなにやら美味しそうな話をしていた。

鹿取「明日、余市に行くんだけど、どこかいいレストランない?」
小西「日曜日だからなぁ。あ、おいしい燻製の店がありますよ!」

そこに横から森崎博之くんが大声で「あー、あそこでしょ、あそこ! あそこはおいしいー!」と(笑)。

鹿取「おいしそうね!」
小西「レストランじゃないけど、買って車でポリポリ食べるとか」
鹿取「ポリポリ?」
小西「甘エビの燻製が絶品なんです」

「甘エビの燻製!」、と、ここで大声を上げたのはボクである(笑)

身をよじったなぁ。甘エビの燻製…。
なんでも、捕れたてでなければ出来ない燻製らしく、売ってる期間も限定されている逸品らしい。うー。でも翌日はボクはYOSAKOIソーラン祭りの審査員をやらねばならず、余市に行く暇はない。

仕方ないし、悔しくもあるから、聞かなかったことにしてスルーすることにした。
で、翌日、審査員を終えて深夜にホテルの部屋に帰ったら、フロントからのメッセージランプがチカチカと。 聞けば、なんかお届け物がある、とのことで、部屋に持ってきてもらった。

ええ、ええ。もう何が起こったかわかりますね(笑)
そう! 写真のとおり「甘エビの燻製」が届いたのでした! 不憫に思った小西さんがどこかで見つけてわざわざ持ってきてくれたのです! ありがとう小西さん!

その日は開けず、大切に東京に持って帰ってきて開けて食べたんだけど、これ、さすがにうまいや…。燻ることで甘エビのとろける甘さがなくなり、独特のほろ甘苦い感じに昇華されている。甘エビの複雑繊細な味が生のときより味わえる。地酒が合うけど白ワインなんかも意外といいかも。上品ながら適度に下品。うまし。

小西さんからの注意書きに「頭の突起(額角とひげ)を折ってから召し上がってくださいませ。流血注意(笑)!」とある。これを折らずに食べると口の中に刺さるらしい。確かに凶器である。

ちなみに売っているのは「南保留太郎商店」(北海道余市郡余市町港町88番地/0135-22-2744)。サイトを見ればわかるけど、いろんなものを燻製にして売っている。う・ま・そーー・だーー・あぁぁ。

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本物の水牛のモッツァレラが…

2010年05月06日(木) 19:20:05

先週の始めだったか、妻が残念そうな声で報告してきた。

「水牛モッツァレラを作っていたカゼイフィーチョの水牛が、口蹄疫に感染しちゃったらしいの」

カゼイフィーチョ。知らない人にはわけわからない単語なので少し解説がいるかもしれない。

正確には「カゼイフィーチョ チーロ・エスポージト」
宮崎県都農町にある牧場&チーズ製造所の名前だ。本格的な「水牛のモッツァレラ」を作っている。オーナーの竹島さんはイタリア・カンパーニャでチーズ作りと水牛の飼育などを学び、2007年に帰国して、日本で水牛飼育に最適な場所として宮崎を選んだとのこと。水牛はイタリアからは輸入出来ないのでオーストラリアからイタリア系の水牛を輸入。2010年4月時点で仔牛を含めて42頭まで増やしていたらしい。輸入も増産も相当な苦労があったと漏れ伝え聞く。

モッツァレラについては特に説明はいらないかもしれないが、少しだけ書いておこう。
イタリアンのフレッシュ・チーズの名前。白くてもちもちでとってもうまい。イタリアン・レストランなどで「カプレーゼ」としてトマトと一緒に食べたことがある方も多いと思う。本来は水牛の乳を原料とする(牛乳で代用したものもある)。水牛は飼育が難しい上に乳の量も少ないらしく、水牛のモッツァレラの方が値段が高い。

で、モッツァレラは鮮度が命なのだ。
南イタリア(モッツァレラ産地周辺)の人はその日作ったモッツァレラしか食べないそうだ。だから昔の日本の豆腐屋みたいに各町にチーズ製造所があり、毎日みんなが買いに来るらしいるらしい。そういうチーズ製造所をイタリアでは「カゼイフィーチョ」と呼ぶ。つまり、ここは「日本のカゼイフィーチョ」を目指している志高い牧場なのだ。

本場イタリア同様の新鮮な水牛モッツァレラを、日本人に提供したい。
その思いで、この「カゼイフィーチョ」では朝3時から作り始め、2時間かけて宮崎空港に持っていき、その日中に東京や大阪のレストランに届くように毎日努力されてたようである。そしてそのレストランはその夜か翌日のランチまでに使い切る。モッツァレラは冷蔵すると味が壊れてしまうらしく、保存がきかないからである。


さて。
妻はチーズ・プロフェショナル協会の理事をしているのでその筋の専門家だ。だからいち早く情報を掴んだのかもしれない。冒頭の言葉はつまりその牧場の水牛が口蹄疫に感染していることがわかったというのである。口蹄疫は伝染力が強いので、感染が確認され次第、家畜伝染病予防法に基づいて全て速やかに殺処分される。

サイトを見るとこんな言葉が載っている。

残念なお知らせがあります。

当牧場の水牛達も口蹄疫に感染しておりました。
子牛を含む、全ての水牛を家畜伝染病予防法に基づいて殺処分しなければいけません。
残念です。


この短い文章がどれほどの思いで書かれたか。

思わず涙ぐんでしまった。
苦労して水牛を輸入し、試行錯誤して日本で「本当の水牛モッツァレラ」を作り、時間との競争で毎朝発送を繰り返し、ようやく人気が出てきて生産が軌道に乗ってきた矢先のことらしい。


※追記(5/10 7時)
ここに続けて、水牛は殺処分補助金対象にはならないという話もある、という意味のことを記述したが、その後の情報で、家畜伝染病予防法第2条では水牛は指定されていないが、第2条本文(表の上の1行)の「政令で定めるその他の家畜」とは、家畜伝染病予防法施行令で規定されており、そこで口蹄疫に該当するその他の家畜は「水牛、しか、いのしし」とされているので、水牛もサポート対象になることがわかりました。家畜疾病経営維持資金融通事業でも、4/23に水牛が追加されています。なので、本文での当該部分を削除します(一応「正確な情報は収集中」と断って書いてはいるものの、どんなことから風評被害が起こらないとも限らないので)。


感染した以上、殺処分は仕方ない。そして、今回の口蹄疫騒ぎでは、「カゼイフィーチョ」だけでなく、畜産農家の多くで殺処分が行われている。ここだけが困っているわけではない。

ただ、食べることが好きな末端消費者として、おいしい本物の水牛モッツァレラを提供してくれようとしたこの牧場が、このまま身動きとれなくなっていくのを傍観しているのは忍びない。うーん、何か手はないのかな…。

いろいろ難しい問題だけど、単に「気の毒だなぁ…」で済ませたくはない。すぐには無理かもしれないが、自分ごととして、何かできることはないかどうか、考えてみたいと思っている。

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銀宝の天ぷら

2010年04月30日(金) 19:36:39

そういえば先週だったかに食べた銀宝のことをまだ書いてなかった。

銀宝。ギンポウ。ギンポ。
いろんな書き方があるけど、まぁそんなに美しくない、どちらかというと醜い魚である(写真はこことかこことか)。でもこの身が淡白で上品で滅法うまいのである。

ボクには食いしんぼの先輩がいて、毎年この時期になると電話がかかってくる。「あのさ、銀宝の天ぷら、そろそろじゃない?」

どうやらその先輩のお父さん(もう亡くなった)がまた食いしんぼだったらしく、中学生とか高校生だった彼に「銀宝はまだかな。春は銀宝だよな!」とか繰り返しつぶやき、そして毎年いろんな店に連れて食べに行ったようなのだ(なんと粋な教育ではないか!)。そういう十数年を過ごし、子供も見事に「こういう季節にはこういうものを食べるものである」ということを知っている食いしんぼに育ったわけである。そしてそれを今、ボクにしてくれている(過去ログだとこれとか。そうやって習った挙げ句ひとりでも行ってる

「でさー、今年はさ、羽田のこの蕎麦屋で天ぷら食べるのがいいかなと思うんだけど」と、彼。
昼ご飯に食べに行こうというのである。さっそく電話してみたけど閉店したのか電話が通じない。では、というのでネットを駆使して調べ、文京区本郷の「森の」という蕎麦屋を探り当てた。行ったことない店である。でもこの時季に銀宝を扱っている蕎麦屋に悪い店はない。とりあえずそこに行ってみよう!

で、ふたりでニコニコ出かけてみた。
ら、奥さんこれがなんと、絶品だったのです。
う、うまひ。実にうまひ。
ま、まいった!

と、縦読みまで入れてしまうようなうまさ(なぜ名古屋弁?)
つうかですね、身が厚い。先輩曰く「ここまで厚い身の銀宝を30年ぶりに食べた」と感激していた。店の入り口の横の生け簀に入れた銀宝は能登の七尾産。ご主人が市場の人と喧嘩してまで仕入れた上物だそうだ。

江戸前の銀宝が入荷するのは6月だとか。このご主人が仕入れる江戸前銀宝ってきっとまたうまいんだろうなぁ。もう今から楽しみである。何日に行こうかな。ちなみにこの店、蕎麦もかなりうまい。板わさなんかの一品も凝っている。お酒の品揃えもとてもいい。いい店だ。銀宝のおかげで発見できた。ありがとう銀宝。そして6月、また行くよ。

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さぬきうどん6時間7軒8玉

2009年11月01日(日) 13:48:36

昨日書いたように、1泊2日で香川に行っていた。
約10年ぶりである。もともとさぬきうどんマニアだったことなどは昨日のを読んでください(わりと「へぇ〜、そうだったんですね」みたいな反応をいただいた。最近新しい読者が増えたこともあるのかな)。

講演があった金曜日は3軒だけ。「はりや」「手打ち十段 うどんバカ一代」「こんぴらうどん」。特に「うどんバカ一代」はうまかったなぁ。ボクが回ってたころは競争がなく、狭い地域を相手に誠心誠意打っていた感じだったさぬきうどんも、ブーム以降は競争や刺激が増え、若手も参入し、いろいろと様変わりしているのを実感させられた店だった。競争と刺激は新しい魅力を運んでくる。その影で古い良さが消えていく場合も多いのだが、その良し悪しはここでは論じない。

で、昨日の土曜は早朝覚醒したのだが、ツイッターやメールでいただいた情報を元にコースを構築していたら(店によって開店している時間が違うのでパズルを組み立てるみたいに構築しないといけない)、9時から回り始めるのが効率的とわかったので、二度寝をし、9時に高松の市街地にあるホテルをスタートしたのである。最後の店で食べ終わったのが3時だから6時間食べ続けたわけですね。ちなみに足はレンタカー。

まずは市内の「上田製麺所」から。
やさしい生活うどん。麺とダシのバランスもよく、強く印象を残すタイプではないんだけど、近くに住んでたら通いたいタイプの店。地元相手の本当にさりげない店で、客も少なく、おばあさんの感じもよく、朝からホッコリできた。ここが朝イチだったことはラッキーだったな。なんか「さぬきうどんの快感を次々と味わいたいマニア」スタンスから、「地元の方々の習慣に混じわらせていただく通りすがりの旅人」スタンスに変換できた感じ。ここで「先を急ぐ感じ」が消え、気持ちもゆったりし、旅を楽しむ余裕が出来た。前の晩に地元民に教えてもらった店であるが、感謝である。

次の店は丸亀までゆっくり1時間弱ドライブして「純手打うどん よしや 」。
香川でのドライブはいろんなことが思い出されて懐かしい。お椀型の山々も美しくなんだか楽しかった。

「よしや」には10時前には着いたっけな。今年できたばかりの新しい店だけど評判がいい。メニューを見ると「ひやひや」とか「ひやあつ」とか並んでいて「宮武」系とすぐわかる。「ひやひや」をいただいたが、麺もまったく宮武系。純手打を標榜するだけあってかなりストイックな印象。かためでどっしり。まぁ昔から宮武系の重さよりもっと軽快なうどんが好きなのだけど、でもおいしい。

この辺からツイッターで実況を始めたが、次々と「丸亀なら○○へ!」とか入ってくる。でも実況に少しずつ遅れめで入ってくるので、もうその土地を離れた後であることも多かった。丸亀情報が入り始めた頃にはもう次の三豊郡に向かっていた。今回一番遠いところにある「SIRAKAWA」である。

「SIRAKAWA」は一般店。11時の開店前に着いて10分ほど待った。なので一番乗り。
メールで小石原はるかライター(笑)から「たこちくぶっかけ」と「ネギ油しょうゆうどん」の両方を食べろ!と指示が出ていたのだが、まぁとりあえず「たこちくぶっかけ」をオーダー。たこちくわ天がついている。で、確かに「小」を頼んだのだが、来てみたら量が異様に多い。んー、この店の「小」はこんななのか?と思いつつひたすら食べたが、会計時に「大」だったことが判明。つまり2玉食べてしまった(これが最後に効いてくる…)。麺自体は意外と重めで、そうだな、昔の記憶的に言うと彦江とかに近い感じか。とてもじゃないけど「ネギ油しょうゆうどん」は食べられないのでパス。

次は坂出に向かって「日の出製麺所」。
「SIRAKAWA」を出た後に「近くの『安並』に是非!」というツイッターが入ったが、もうずいぶん離れちゃったよー。こういうすれ違いが多かったけど、リアルタイムでどんどん情報や感想が入ってくるツイッターは実に面白いな。ひとりで旅してるのに大勢と一緒な感じだった。

「日の出製麺所」に着いたのはお昼すぎ。時間的なものもあって、本日初めての行列。それも10分ほどで済み、「冷たいの」をいただいた。ここはみんなが勧める人気店だけあってうまかった。白くて美しい麺。ぐぃーんと粘ってぷっっっちんと気持ちよく切れる。この感触や良し。

5軒目は高松市内に戻って「麦蔵」を考えていたのだが、まぁ腹ごなしもあって地道をじわじわ走っていたところ、ツイッターに「国分寺の一福(いっぷく)今話題です。奇跡の麺を出すそうです。麺通団の団長絶賛です」というコメントが入った。で、ふと今いる交差点の信号を見たら「国分寺郵便局前」とある。うわ、ここじゃん!
ということで、すぐ iPhone で住所を調べ、カーナビ(これが出来てさぬきうどん巡りの魅力は半減したと思うが)に入力し、ゴー。そこから数分のところ。あー良かった。

で、この「一福」、うまかったなぁ。
細麺なんだけど、粘りと伸びが尋常ではない。前の晩に食べた「こんぴらうどん」の細麺の快感を100倍上回るかも。思わずお土産用の生麺も購入。店の感じも適度に広く、家族連れが多くて地元に混ざる感じがいい。生活がちゃんとある。厨房も活気があって、お兄ちゃん(店主?)も明るくて気持ちがいい。いい店だ。

で、6軒目は高松に帰って「麦蔵」。
前の日に「はりや」で食べた「かしわざるうどん」をいただいた。かしわ(鶏)天がついてくるもの。このかしわ天、うまい(「はりや」のもうまかった)。うどんは「はりや」より好きかなぁ。粘りがあって気持ちよい。でもこのタイプの麺なら前日に食べた「うどんバカ一代」の方が好きかも。

かしわ天を食べたら、突然お腹がいっぱいになった。
ここまでで6軒7玉。計画ではあと「ゴッドハンド」と「もり家」に行く予定。でも胃袋的にはどちらか1軒で限界かなぁ…。そうなると有名な「もり家」に行きたいところだが、昨日通りがかりにみつけた「ゴッドハンド」にもどうしても行ってみたい。だって店名が「地上最強のウドン ゴッドハンド」だよ! 麺を打つ手がゴッドハンドなのですよ奥さん!
まぁそういうトリッキーな店名でおいしい店は少ないのだが、地元の人に聞いたら「たしか『ゴッドハンド』は『うどんバカ一代』に関係があるはずですよ。弟子だったかなぁ」とか言うので、急に行きたくなったのだった。「うどんバカ一代」の麺はとても気に入っていたし。

で、とりあえず「ゴッドハンド」に出かけた。本日の店名大賞(写真)。
麺はね、やっぱり「うどんバカ一代」には負けるかも。かためで力強いんだけど快感が少ないタイプ。口内暴力感が少ないのである。軽快に跳ね回ってくれない。店内もなんだか暗くて少し不利かも。

さて、ここまでで7軒回ったが、1日11軒の記録を持つボクとしては、もう1軒くらい行けるのではないか、と、とりあえず「もり家」に出かけることにしたわけだけど、「ゴッドハンド」の身が詰まったうどんもかなり効いてきて、運転中どんどん満腹感が広がっていく。あぁ「SIRAKAWA」で「大」が出なければ食べられたのに…!

ということで、「もり家」近くまでは辿り着いたんだけど、もう全然胃袋に余裕がない感じ。帰りのヒコーキまでまだ時間があったので食べる時間はある。もしかして寝れば腹が減るかといったん道端に車を止めて寝ることにしたのだが、30分ほど寝て起きたらもっとお腹いっぱいになっていた(笑)

ここで終了〜。「もり家」は次の機会にとっておこう。
4時にレンタカーを返し(空港店)、5時のヒコーキで東京に帰ってきた。6時間7軒8玉。あのまま高松に泊まっていれば、夜にもう2軒くらいは行けただろうから、まぁ1日で言うと9軒10玉は行けたかなという計算。10年前に11軒11玉食べた頃からそんなに衰えてないかもしれない。48歳にしては立派なのではないか(自殺行為という噂もある)。今回は昔行った名店たちを回らず、すべて新しい店に絞ってみたが(10年のブランクを取り戻すためにも)正解だったかも。「いまのさぬきうどん」を体感できた。

って、ホント、相変わらず長いさなメモでスイマセン。
昼ご飯がまだなので、お土産用に買った「うどんバカ一代」の乾麺か「一福」の生麺かを食べることにしよう。ホント、さぬきうどんって飽きないなぁ。ということで!

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10年ぶりのうまひゃひゃ旅

2009年10月31日(土) 5:19:15

講演で超久しぶり(約10年ぶり)に香川に来ている。

最近読み始めてくださった読者の方はご存知ないかもしれないが、「さとなお=さぬきうどん」と言われた時期もあったワタクシ(→さぬきうどんスペシャル)。さぬきうどんブーム前の1998年(もう11年も前だ!)に「うまひゃひゃさぬきうどん」という本を出したくらいはさぬきうどんマニアだったのだった(本の元原稿は「さぬきうどんをChain Eating!」。読みやすいので是非)。

その後ちょっと哀しいトラブルがあったりして香川は自分の中では封印し、鮮烈な舌の記憶とのみ一緒に暮らしてきたわけなのだが、そろそろ香川への封印も解きたいなと思っていたら、ちょうどいいタイミングで高松での講演の話が舞い込んだという流れ。いや〜、本当に久しぶりだ。昔一緒にさぬきに通った妻からは「ひとりで行っちゃダメ!」と怒られたが、いや、まぁ仕事なので、スイマセン、と平謝りして出かけてきたのである。

さーて、10年ぶりにどこで食べるかなぁ。
10年前は最高で1日11軒ものさぬきうどんを消化した我が胃袋もいまや衰えた。そんなに無茶なハシゴはできないだろう。しかもあれからほとんど情報を仕入れてないから昔の店しか知らない。店もずいぶん様変わりしたと聞く。名店たちに大駐車場が出来たらしいし(なにせまだ「山越」に数台分の駐車場しかなかったころに通っていた)、フェイバリットだった「松家」が閉店したらしいし、「宮武」も閉店したらしい。うーん、今どこの店が旬なのかがまったくわからん。そうだツイッターに聞いてみよう!

ということで、ツイッターを使ってみんなに聞いてみることにしたら、いろんなコメントやDMが飛び込み(ありがとう!)、だいたいの目安がついてきた。まぁ金曜は大事な講演があるし、その後は主催者との会食もあるので数軒しか行けないが、一泊後の土曜日は半日使えるぞ。よしココとアソコとアソコを回って、とか、ヒコーキの中で胃袋イメトレしながら高松空港に着いたのである。

結局昨日の金曜は午前中に空港に着き、ここ10年で超有名になった「はりや」にまず行って、その後、講演会場にも近かった「手打ち十段 うどんバカ一代」に行ったのだった。
約10年ぶりの本場喰いであった「はりや」は、なんというか期待値が上がりすぎたこともあるのだけど、ちょっと「うーん…」という感じ。でも「うどんバカ一代」はうまかったなぁ! うまひゃひゃだった。そうそう、これでこそさぬきうどん!

ただ、久しぶりだったこともあって分量を間違え、「はりや」では「かしわざる」の大をもらってしまい(かしわも大量!)、「うどんバカ一代」でも二玉もらってしまい、わりと腹一杯に(衰えた〜!)。三軒目を諦めて講演会場に向かい、予習をすることにした。わりとオオゴトな講演なので真面目に予習。しこしこ。

で、無事に講演を終え(ホッとした)、主催者と居酒屋「やまちゃん」という店へ。ここの魚、実にうまかった(やま揚げも)。香川に来るといつもさぬきうどんしか食べないが、実は他にもいい店の噂をいろいろ聞く。でも結局うどんだらけの旅になっちゃうんだよなぁ。
ただ、〆はさぬきうどんにさせてもらった。現地の方に聞いたら10年経った今でも「夜は『鶴丸』か『五右衛門』ですねぇ」ということらしい。へぇ〜、じゃぁ再訪しようかなと思っていたら「こんぴらうどん」という店の細麺がいい、ということも聞き、初めてだったのでそちらへ。名物の細切りざるうどん。個人的には太麺の方が好きかな。でもなかなかだった。

さて、今日はどうすっか。ワクワクして早朝覚醒。
でも土曜はどの店も行列と聞いた。行列がひどいと5軒くらいしか回れないかもしれない(17時ころのヒコーキ)。昔のフェイバリット店の「今」を食べたい気もするが、最近旬の店も食べてみたい。うーむ、どうしよう…。とりあえず早朝から出かけてみよう。

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山ウズラ

2009年10月30日(金) 5:59:10

あるレストランから「お待ちかねの山ウズラが入荷しました」とメールが昨日の朝に入り、さっそく昨晩行ってきた。前から「いいのが入荷したらご連絡を」とお願いしていたのである。

「山ウズラが入荷したら一緒に行こう」と約束していた先輩に連絡を取ったら「また急な話だねぇ。でも、ま、これも何かの縁だから無理してでも行こう」ということになり、お互いに会食があったのにその会食の前に山ウズラだけ食べにそのレストランへ行くことに。つまり前菜扱いというか、結果的にハシゴの一軒目。まぁそれも何かの縁。

この日の山ウズラは北欧産。いわゆるペルドロー・ルージュである。「ペルドロー・グリの方が稀少です」と説明を受けたが、ルージュで充分(グリの方がより濃厚は味)。素材の味がわかるよう、部位を分けてシンプルに焼いてもらった。ペルドローからとったコンソメも作ってもらい、シャンパンも飲んで、とっても贅沢な一軒目となった。

ペルドロー・ルージュ。ジビエの定番。少々お値段も張るのだが、季節ものとして一年に一回は食べておきたい(とはいえ2年ぶりだけど)。これを食べると一気に冬本番という気分になる。淡白だけど香り高くてうまいなぁ。1時間だけいてサッと食べて、それぞれに違う場所へ。こうして食いしん坊の夜は更けてゆく。

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鱈のピルピル

2009年10月29日(木) 7:16:06

2年前だったか、金沢に行ったとき、「アロス」というスペイン料理の店に行った。
金沢でスペイン料理? と最初は戸惑ったが、金沢在住の人たちがみんな勧めるので、ワイワイと一緒に出かけたのである(たしかハシゴ三軒目だったかな)。地元の大人気店のようで、とてもよく流行っていた。そして何を食べても元気でおいしい料理ばかりだった。いい店だったなぁ。シェフはバスク地方で修業したとかで、地の魚を使ったバスク料理が名物。

特に印象に残ったのは「鱈のピルピル」という料理。
これ、鱈の皮の部分のゼラチン質をオリーブオイルの中に溶け出させ、乳化させていき、見事においしいソースに昇華させるのだが、その過程で料理人は20分から30分、鍋を手でもって火から10センチくらい離し、円を描くように回し続けないといけないのである。「アロス」ではカウンターに座ったので、シェフが鍋をずぅっと回し続ける様を見ることが出来た。実に根気がいる作業。というか腱鞘炎ものだ。大変だなぁ。そして実際に食べたその料理の鮮烈だったこと! その手間がかかる作業を見続けていたことも相まって、なんだかとても記憶に残る味となった。

そのことをずぅっと覚えていて、東京でも「鱈のピルピル」を探していたのだが、昨晩ようやく巡り会った。
渋谷の「アバスク」というバスク料理の店(細かく言うとバスク地方のフランス側の料理らしい)。最近バスク料理の店って少しずつ増えていて、青山の「ローブリュー」も西麻布の「チョコ(TXOKO)」もとても好き。「アバスク」もこぢんまりと親密でとてもよいレストランだった。

で、あぁいい店だなぁと思いつつメニューを見ていたら、うわぁ「ピルピル」があるよ!
思わず声を上げたら「ピルピルを知ってる人も珍しいですね」と。いやスイマセン、本場ではなく金沢で食べただけなんですけどね。

この店のレシピは鍋を回すのではなくかき混ぜて乳化させていくパターンのようだけど(厨房からカシャカシャとかき混ぜる音がする)、いずれにしても、ようやく東京で巡り会えて良かった良かった。満を持していただいた「鱈のピルピル」、ニンニクが強く効いていてとてもうまかったっす。そうそうこの味。うれしいな。ありがとう。ごちそうさまでした。

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がんじゅーやみせーみ

2009年05月30日(土) 17:43:50

沖縄から東京に着いた途端、疲れ復活。頭痛再発。ヒコーキに乗っている間いろいろと仕事のことやこれからのことを考えていたのもいけなかったのかも。ストレスさまのお帰り。沖縄にいる間はあんなに快調だったのにな。

昨晩は国際通りからほど近い「すーる」(糸満の「淡水」から麺を仕入れている店。なかなか良かった)で仕事相手と沖縄そばを食べた後、夜遅めにひとりで「山本彩香」へ。

驚いた。世界一美味しいと断言したい彼女の「豆腐よう」が変わっていた。いい方に。
大豆を外国産から厳選国産に変えてみた、とのことだけど、それだけでこんなに違うんだ…。味に甘みが増し、食感も相当クリーミーになって、全体のバランスがより良くなった。完成度があそこまで高かったものがより改善されて目の前に。うーむ。これを絶品と呼ばずしてなんと呼ぶ。泡盛「春雨」とのマリアージュも抜群。あぁ至福。

昨晩はお客さんが少なく、しかもみなさん早めのご退散で、途中から彩香さんとふたり。カウンターでずっと琉球語(うちなあぐち)を教えてもらっていた。ボクの変な発音にお互い大笑いしながら。
いろいろ教わったけど、まぁなんつうか難しいわ。帰る際、覚えた琉球語を組み合わせて「うみなぃ、けーゆん」と言ってみる。うはは。通じたよ。「敬愛する女兄弟よ、帰るわ」みたいな感じ。イントネーションは平板に。ちなみにタイトルの「がんじゅーやみせーみ」は「お元気ですか?」である。「がんじゅー」=「頑丈」。みなさん、お元気ですか?

いままで彩香さんと店員の由美子さんが話す琉球語がまったく聞き取れなかったけど、なんとなーく聞き取れる部分が増えてきた気はする。単語は大和言葉と共通するものがあるし。あとは語尾がわかってくればな。でもこれが難しい。

寝たのが遅かったのもあるけど、カラダがいい感じに緩んだようで、今朝はホテルで朝9時くらいまで眠れた(東京の家では5時台に目が覚めてしまう)。目が覚めないって気持ちいい。でもそれも沖縄限定なのだろう。ヒコーキでもぐっすり眠れた。来週がまた忙しいので少しでも多く眠っときたい。明日の日曜も仕事だし。とりあえず夜ご飯食べたらすぐ寝よう。

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ボクには「春雨」と呉屋さんのマンゴーがある

2009年05月04日(月) 12:38:52

さて、一日遅れで沖縄最終日(5/2)のことを簡単に書いておこう。

この日は連休中唯一のオフ。まず、昼過ぎに宮里酒造所に伺った。
ここは近年評判をどんどん上げている泡盛「春雨」を造っている酒造所。実際ボクは最近ではこの「春雨」が一番好きである。「山本彩香」でもこの泡盛を出している。というか彼女が作る絶品の「豆腐よう」も「春雨」を使用して仕込んであるようだ(だからあの豆腐ようには「春雨」が一番マリアージュする)。

小禄(おろく)の住宅街にさりげなくある赤瓦屋根の酒造所。こんなに有名なのに本当に小さいし看板もない。駐車場に大きな野生のキーツ・マンゴー。これが目印。これがなければ再訪できないくらいさりげない。こんなさりげない酒造所、初めてである。
後で宮里社長(ボクより2歳ほど若い)にお話しを聞いたら、「最近、小禄も住宅街になり、こういう工場に対しての規制が多くなって、建物を大きくも出来ないし建て替えも修理もできないんです。こちらの方がずっと古くからやっていて、住宅街になったのは最近なのに…」とのことだった。だから売れていても大きく出来ず、施設が古くなっても修理もできない。周辺に気を遣って看板も出していない。そんな風に身を潜めて沖縄を代表する泡盛が造られている…。

話をくわしく聞いていくと、ボクみたいな第三者が聞いても「それはどう考えても行政のイジメだろう」と思えるようなことが他にもザクザク。そのくせ「観光が一番大切!」と、こんな小さな酒造所に観光バスを入れろとゴリ押ししてくるとか。宮里さんは本当に(ほんとの本当に)真面目で真摯な方なので、それにも文句ひとつ言わず対応しているが、いろんな状況を聞けば聞くほど沖縄行政の問題は根深いな。昨晩も彩香さんとさんざんそんな話になった。それにしてもなぁ…。

まぁそれはともかく宮里酒造。
ボクは泡盛の酒造所は15ほど訪ねているが、この宮里酒造はダントツに清潔だ。
いや、もっと近代的で清潔な酒造所はある。ただ、設備がものすごく古く、修理もできないことを考えると、奇跡的に清潔。泡盛を造っている工場特有の匂いもほとんどしない。壁に黒麹も染みこんでいない(他の酒造所で壁が真っ黒なところは「これが黒麹が豊富な証拠」と言っていたりするが、単に管理が悪いだけなのは宮里酒造を見ればすぐわかる)。

試作途中の新酒を飲ませてもらったが、「泡盛が嫌いな人にもおいしいように」という目的で作ってあって、アタックが柔らかいわりに、手のひらでグラスを握って温めながら飲んでいるとだんだん花の香りが立ち上ってくる美しいお酒だった。「これ、ぬる燗にしてもいいかもですね」と言ったら「そうなんです!」と意を強くされて語る語る。泡盛のことを語り出すと宮里さんの口は止まらない。本当に真面目で真摯。これからもここの泡盛を飲み続けよう(あと、石垣島の請福酒造さんと)。

そして特筆すべきは従業員の感じ良さ。本当にすべての人(男性5人だったか)が異様に感じが良い。きっと宮里さんの薫陶が行き届いているのだろうなぁ。ひとりの若い従業員が「私、本当に宮里さんの下で働けて幸せなんです」とこっそり教えてくれた。いい会社だ。こういう酒造所がおいしくないお酒を造るわけがない。


すっかり感動して、いろんな泡盛をご馳走になって酔っぱらって、次は東風平(こちんだ)にあるマンゴー園へ。

今年、彩香さんの紹介で、マンゴーの木のオーナーになった。
完全無農薬自然農法のマンゴー。彼女の友達の呉屋さんという方が作られているマンゴーである。この方に会いがてら、ボクのマンゴーの木を見学に行くことにした。

東風平の景色のいい丘の上にその農園はあった。ちょっと見、荒れ放題。でも「奇跡のリンゴ」を読んだボクとしては、完全無農薬だと荒れ放題になることもありえることはわかっているつもり。しかし呉屋さん本人に会ったときはビックリしたな。「奇跡のリンゴ」の木村さんと同じく歯がないし、雰囲気も笑顔もまさに木村さん。で、話を聞くと、やっていることも木村さんと近い。儲け無視の情熱から手作りの液での木の消毒の仕方とかまで。

ひと通りマンゴーの成長具合を見せていただいてから(収穫は7月かな)、農園横の作業小屋みたいなとこで「ゆんたく」(おしゃべり)。ここでまた沖縄行政の話になった。「私ら最低限食べられればいいんです。何の欲も持ってない。いいフルーツ作って喜ばれれば満足。でも、行政のやってることは『生きていくな』と言っているに等しい。邪魔ばっかりする」と。
ここでもボクはなるべく客観的に聞こうと努力した。行政にも言い分はあるはずだし、こちらが一方的に憤っている場合もある。でも今回もドス黒い気分に。真面目に沖縄の未来を考えて地道に真摯に働いている人たちから「もう無理。辞めようかとも思う」みたいな話を昨晩から連続してずっと聞いている。あぁ沖縄はもう本当にダメかもなぁ…。

んー…、まぁそれはそれとして、呉屋さんの無欲さには呆れかえったな。
何にもいらない、というのが徹底している感じ。で、一時も手を休めない働き者なので、次から次へと新しいフルーツに挑戦していく。マンゴーだけでなく、バンペイユ(晩白柚)やフートー(ローズアップル)のこと、カニステル(エッグフルーツ)のくわしい話など、フルーツに関するいろんな情熱を次々と聞かせてもらった。楽しくて仕方がない感じ。でもそれがお金にはほとんど結びついていない。「ちゃんとお金に結びつけないと、ヒトも物も動かないし、現実が変わりません。儲けろって言ってるのではなくて、ちゃんとお金に結びつけた方がいいですよ」とお願いしたが、あまりピンと来なかった模様(笑)

つーか、「この敷地の一等地にログハウスを建てたらいいよー」と勧められた。タダですか(笑)。なんつうか、とことん無欲。ヒトが喜んでくれればいい、自分は食べていけるだけでいい、という感じ。あぁこんなヒトがまだいるんだなぁ。


帰りのヒコーキの時間が迫ってきたので、再会を誓って空港へ。
先ほど預け物をした宮里酒造に寄ってそれを受け取ってモノレールで空港へ行こうとしたら、宮里さん自らクルマで空港まで送ってくださった。

ビジネスの世界でビジネス・ライクにビジネスマンの常識に沿って生きていると、いろんなことを忘れていく。特に東京ではそれが顕著である。
でもボクは大切なことを思い出す方法をこの日ふたつ手に入れた。泡盛「春雨」と呉屋さんのマンゴー。東京で何かを忘れている気がしたとき、「春雨」飲んで呉屋さんのマンゴーを食べよう。きっとちゃんと思い出せる。そんなことを思いながらJAL機内へ。

今年はもう一回くらい、沖縄に行けるかな。

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夜、「山本彩香」にて

2009年05月02日(土) 10:28:45

那覇ロケも無事に終了。
天気にも恵まれ、スタッフにも恵まれ、段取りよいいいロケになった。上がりが楽しみ。

夜はスタッフ数人と「琉球料理乃山本彩香」へ。
「豆腐ようを美味しいと思ったことがない」という方がいたので、ではではと自信たっぷり食べていただいた。おそるおそる一口目を食べるのを見ながら、その後の喜色満面が予想できるだけにニヤニヤしてしまうワタクシ。そして予想通りの反応にこれまたニヤニヤ。だって美味しいもんね。ここまで手をかけて手作りしている店を他に知らない。

ボクが来店すると「実験台」ということで実験的に作っている料理を食べさせてくれる。昨日の白眉は「間引きマンゴーの酢漬け」。間引いた小さな小さなマンゴー(クルミくらいの大きさ)を3日かけてアクを抜き、酢漬けしたもの。マンゴーの実を大きくするために間引いたものすら無駄にせず美味しくしてしまう彩香流。しかし説明されなければ絶対マンゴーとはわからない。カタチは空豆、味は漬けた青梅が近いかな。食感はキュウリのピクルスが近いかも。うまし。

いつもにまして美味しい夜。
ゆっくり堪能した後、ひとり残り、彩香さんといろいろ話し込んで(沖縄の未来とか、自然破壊の問題とか)深夜まで。沖縄の自然と伝統と食を愛する気持ちが高じて、逆に無力感に苛まれている彼女。いえいえアナタがいなければ消滅していった伝統料理はたくさんあるし、琉球舞踊でも琉球料理でも、その伝統をしっかり世に伝えていっている国宝級のヒトなんだから、そんなに自分を責めないで、と言いつつ、いつしか一緒に無力感の世界へ。どうすれば壊れかけた沖縄が元に戻るのだろう。ボクに出来ることは何だろう。

夜道をホテルに向かって歩きながら、こういう想いを深く共有してくれる作家の駒沢敏器さんに深夜電話。でもそんな話に辿り着く前に「彩香さんのとこで食べてきたの! 良かったですねー」とひたすら明るく羨ましがれ、なんというか、無力感に苛まれているヒマがあったら、おいしいこと、楽しいことをどんどんやって、どんどん伝えて、どんどん広めるのがまずボクに出来ること、という基本を思い出した。まずそれがボクにできること。それすら最近さぼってますからね。人生をさぼってはいけないよ、ホラ、そこを歩いてる自分!

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農家の台所

2009年01月26日(月) 7:36:29

モスクワじゃなくて北海道のモリが上京した(モリがふたりいるからややこしい)。
新作芝居の稽古&公演のため数ヶ月滞在するという。そんじゃま、とりあえずご飯でも食べよう!と、昨晩久しぶりに会ってきた。約3ヶ月ぶりかな。

日曜の夜なのでやっている店が少ない。
いろいろ探して、野菜大好き&アグリ・タレントの道を歩んでいるモリのために(北海道ローカルで「あぐり王国北海道」という農業番組を持っている)、恵比寿の「農家の台所 恵比寿店」を選んでみた。

いや〜、ここイイわ。
入り口は冷蔵庫状態になっており、野菜が直売されている。店内も野菜野菜野菜。契約農家の方々の巨大ポスターが選挙ポスター状になってダダダと貼られており、しかもなんと畑まで店内にある(温室状になっている)。
コースは3500円からと安価で、ユニークなのは、野菜:魚:肉の比率でコースを決めること。6:2:2とか、5:2:3とか、まず比率を決め、その比率の中で3500円〜5500円のコースを選ぶのだ。面白い。

コースにも一品にもあるが、「特選農家のサラダ」というサラダバーが白眉。
ホントに美味しそうな野菜が並んだサラダバーが取り放題。もうこれだけでお腹一杯になるんじゃないかな。珍しい野菜も多いので(ソルトリーフとか)、つい取りすぎてしまう。小松菜とか白菜とかがまずうまい。大根も3種類くらいあり、人参もうまい。コースだとおかわり1回までだけど、一品ならおかわり自由で780円。これ、採算とれているのかな。

コースも量が多く、ちゃんとおいしい。コストパフォーマンスがとても良い。ご飯に辿り着くころにはお腹一杯に。
デザートは別注文だが、苦かったり酸っぱかったりと妙に面白い(というか苦すぎだろう!というのもあった)。話題の白イチゴもあり、場も盛り上がる。

敢えて言えば、全面禁煙じゃないんだよね。中二階が喫煙可能席になっている。生野菜を扱っているのにタバコの煙がそこはかとなく漂っているのはちょっと…。
まぁくわしくは「うまい店対談」で書こうと思うが、とはいえ安くてうまくて野菜がいっぱいとれて、なんだかお得な店である。昨年11月にオープン以来、予約がとれない店として有名になっているらしい。さもありなん。モリなんか「明日また来ようかな」とか言ってたし。

もちろん今朝のトイレはズドンスルスルでした。
食物繊維とりすぎ。腸スッキリ。ありがとう、野菜!

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山奥の命

2009年01月12日(月) 10:20:51

姫路に住む友人夫妻のお父様が週末猟師をやられていて、毎年この季節になると新鮮なイノシシ肉を送ってくださる。ありがたく昨晩はボタン鍋。粉山椒をまぶしたイノシシ肉を味噌味の鍋にして、メドックの赤ワインを合わせてみた。シャトー・ラ・トゥール・サン・ボネの2000年。

同封されていたお手紙がいい。

新年早々、父がイノシシを獲ってきましたので、お送りいたします。
今シーズンは、昨年秋に台風の上陸がなかったので山の木の実が充実しているのでいい状態(美味しい脂)だろうと思っていたところ、山には餌の木の実がなくイノシシもあまりいい状態のが獲れませんでした。
天然のジビエは山の状態によって味が変わってくる、という常識的なことも、こうして都会生活を送っているとわからなくなってしまう。山の木の実の状態を想像しながらイノシシをいただく楽しさ。食卓が山に直結しているような実感。安定した食肉の切り身をスーパーや小売店で買っている毎日では決して味わえないシズル感。

山の状態を想像しながら食べていると、それをむしゃむしゃ食べながら幸せに生きていたイノシシの命を奪って栄養にしている自分たちの存在にも自然と気づく。キレイゴトを言う気はないが、生き物たちの幸せな日々を奪っているという自覚を持って毎日大切に生きなければと思う。

酔って早く寝たせいか、山のチカラが宿ったせいか、今朝はすっきり目が覚めた。
とりあえず元日以来続いている早朝勉強をやり、いまから企画書作り。今週はいろいろ仕事が立て込んでいるので、相当準備をしておかないと危ない感じ。祝日とはいえ今日は地道にがんばる日。

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喫茶店カレー

2009年01月08日(木) 7:40:04

なんか急に「喫茶店のカレーが食べたい」という欲求に駆られた。
インド風でも欧風でもタイ風でもない、あの独特の日本カレー。楕円のカレー皿で給されて隅っこに福神漬けの赤が眩しい街角カレー。ご飯がべっちゃりめでルーも水溶き片栗粉なんか入ってねっとり甘かったりする家庭カレー。紙ナプキンが巻いてあるスプーンとコップ一杯の水道水だけが脇役な、シンプルで懐かしい昭和洋食カレー。たまに昭和時代のケチャップ味ナポリタンが無性に食べたくなるのと同じように「喫茶店カレー」もたまに無性に食べたくなる。

出来ればウッディかつモルタルな昭和の喫茶店で、カウンターの椅子が木の作り付けだったりすると気分。マスターは黒のベストを着ているロマンスグレーの60代で、レジですれ違った時ほんのりブラバスの香りが漂ったりするともっと気分。デミタスカップのコレクションが棚にあったり、古いタンノイのスピーカーが隅に据え付けてあったり、山岳写真が額入りで飾ってあったりするともっともっと気分。そんな喫茶店でカレーが食べたい。

で、仕事場からとりあえず出た。そしていきなり途方に暮れた。そんな喫茶店どこにもない!

スタバはある。タリーズもある。ドトールもベローチェもエクセルシオールもある。チェーン店以外にもお洒落な「カフェ」はいろいろある。でも、昭和っぽいカレーをメニューにしていそうな「喫茶店」がない! オヤジたちが外回り中に一服するような「喫茶店」がない!

いや、近所にひとつある。
でもそこは喫煙率がスゴイのだ。一度だけ入ったことがあるが、煙で奥がよく見えない。この辺のサラリーマン愛煙家の溜まり場なのだ。んー、あそこでカレーを食べる気にはなれないなぁ…。

という流れで、いきなり昼飯難民に。
極寒のビル風が吹きすさぶ中、喫茶店がありそうな古い一角を彷徨い歩くも全然ない。飲食雑居ビルに入ってみても全然ない。んー、もう寒すぎるしカレーチェーンで済まそうか。いや専門に作られたものが食べたいのではない。雰囲気も味も全然違う。初志貫徹。喫茶店を探せ!

結局、情けないというか、屈辱的な結末に。
近くの「設計者がんばりました系複合型お洒落高層ビル」の2階に入っている「大正・昭和ロマンを疑似再現した、いかにも空間プロデューサーが裏にいそうな喫茶店」に入り、「昭和の喫茶店カレーを求める一部愛好家が泣いて喜ぶであろうことを狙って企画されたと思われる、典型的要素をすべて兼ね備えた、しかし950円とバカ高い邪道カレー」を食べてしまった。

意地が食欲に負けた。
あぁ不満だ。屈辱だ。でも結構おいしかった。orz

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アグー豚 @我那覇畜産(名護)

2008年01月14日(月) 15:04:03

昨日、ボクたちプロジェクト・メンバー一行は名護の「我那覇畜産」を訪れた。
ボクはここが生産している「やんばる島豚」が豚肉の中で一番おいしいと思っている。送ってもらって家でしゃぶしゃぶで食べた時に衝撃を受けたのだ。バークシャー種とデュロック種をかけ合わせたものにアグーをかけて出来た「やんばる島豚」。肉の香りが実に素晴らしい。

ボクは5年ほど前、アグー(琉球在来黒豚)を細かく取材したことがある。
その当時、純血のアグーは沖縄本島にたった36頭しかいなかった。戦争で激減し、その後はアメリカからランドレース種などの繁殖能力が高い(つまり多産な)白豚が入ってきて、純血はほとんど絶滅したのである。アグーとランドレース種などとかけ合わせたハーフやクォーターは多いが、純血は北部農林高校や試験場などに36頭しかいなかった。

アグーは生殖能力が低く、なかなか増えないこともあって、昨日「我那覇畜産」で聞いたら、2007年現在でも、純血はまだ79頭しかいないそうである。
いまでは東京でも「アグー豚」を出すレストランが多いが、まぁウソとまでは言わないが、多少表記に誇張がある。純血はあり得ないのだ。ハーフかクォーター、良心的な店でも75%とかのものを出しているかも程度だろう(現在はランドレース種とのハーフである「沖縄あぐー」というブランド豚も出荷されているので、それを出してアグーを名乗っている場合もあるかもしれない)。

ボクは定期的につぶす純血のアグーをたまたま食べたことがあるが、肉の香りが尋常ではない。脂が多いのにあっさりしていて、もたれず、旨みも強いのだ。とても魅力的な黒豚だ。増やすのが難しい品種だが、志高くアグーを増やそうとしている畜産農家がいくつかある。そのうちのひとつが「我那覇畜産」なのである。

訪れてまずびっくりしたのは、その文化度の高さ。
入り口から前庭まで花が咲き乱れ、蝶が舞う。たぶん奥さんがやるのだろう、実に丁寧に手入れがされている。しかも清潔。その美しい敷地内(建物内じゃなくて敷地内)に入るためには靴を消毒しないといけないという徹底ぶり。畜産農家とかいくつも訪ねたことがあるが、これだけ意識というか文化度が高い農家は初めてである。たいていは効率重視で味気ない外観のところが多いからだ。

前庭の美しい芝生の上でアグー豚に会わせてもらい、仔豚と戯れさせてもらったりした後(写真12)、お話をいろいろ伺ったが、オーナーの我那覇明さんの「安心安全、しかもおいしい」ことへの情熱がまたすごかった。特に安心安全に対する意識の高さがすごい。そこまで清潔に管理しますか!という感じ。放牧なども考えたそうだが、鳥などによってもたらされるウィルスを考えるととてもじゃないが無理、ということで、そのかわり徹底的に豚に居心地がいいように屋内施設を作ったそうだ。お話は日本の食や健康への危機感にまでおよび、尽きない。

純血アグーも少しずつ増やし、ここには17,8頭いるようだ。かけ合わせの研究を重ねた結果「やんばる島豚」ブランドを作り出し、自信を持って販売しているようである。他にランドレース種とデュロック種をかけ合わせた「流美豚(リュウビトン←ルイビトンの洒落らしい:笑)」や75%のアグー「島黒」も売っている。

高い志と実行力。ちょっと感動した。「佐藤家は今後ここの豚しか食べません!」と、その場で宣誓しようかと思ったくらいである。しかも本当に豚好きらしく、事務所には豚キャラのコレクションがたくさん。奥さんが豚を使った昼ご飯を振る舞ってくれたが、これがまたうまかった!

もうすっかりファンになって、夕方に我那覇畜産を後にした。
ちなみに、我那覇畜産がある名護の大川辺りは実に美しい。「この辺に別荘を買おう!」とみんなで盛り上がりつつ、クルマで那覇へ帰った。あぁ楽しかった。

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牛リテラシーあがりまくりの取材旅行

2005年08月23日(火) 22:21:01

石垣島での行動だけまとめておこっと。石垣牛などについては取材記事を書き終わってから沖縄スペシャルにまとめます。

8/19
昼すぎに石垣島着。ホテルにも入らずすぐに「八重福牧場直営レストラン」の取材。オーナーからくわしく取材&撮影して、焼肉を食べたのが16時。これが昼メシ。次の店「やまもと」に移って取材&撮影して18時に夜メシ。もちろん焼肉。たった2時間しか経っていない(泣)。でもさすがにうまひ。神戸のかずさん夫婦がたまたま石垣に来ていたので、合流して一緒に食べる。腹一杯食べる。その後、大腹かかえて「ヴィーノ・エ・ヴァン」にワインを飲みに流れたのだが、「石垣牛の取材だっていうから石垣牛料理をご用意して待ってました」と大岩シニアソムリエに言われ、石垣牛テールのワイン煮込みなどを泣きながら。腹一杯すぎ。でもうまかった♪

8/20
起きてもまだ腹一杯だったのだが、公設市場近くのカフェ「マヒマヒ」でひとりスパムチーズサンドを朝メシに食べてしまう。自分のアホさ加減に呆れながら「請福酒造」を訪ね、久しぶりに漢那恵子さんと2時間話し、元気をいただく。さて取材。13時にまずは「舟蔵の里」に行き、オーナーのお話をいろいろ聞き、いろんな料理を腹一杯食べる。石垣牛のステーキなども腹一杯。とてもレベルの高い料理でうまかったけど、すぐに次の店で食べないといけないのにすでに満腹。どないすんねん。15時すぎ、老舗レストラン「パポイヤ」に移り、A-5級で贅沢に作ったハンバーグや牛刺しを食べる。目から鱗の美味だったけど、腹一杯だ。でもそれから1時間後に「石なぎ屋」へ夜メシを食べに(泣)。取材・撮影後、特上焼肉セットや石垣牛握りや牛丼。オーナーの熱い志に感動しつついただく。JAブランドとプライベート(自家牧場)ブランドの違いを知る。驚いたのはこの店、純粋アグーを扱っていたこと。その話についてはまた機会があったら書きたい。それにしても胃腸が肉だらけな一日。

8/21
朝から「石なぎ屋」の自家牧場でもある「牛種子牧場」(白保)へ行き、取材&撮影。繁殖牧場と肥育牧場の両方で熱い話を聞く。牛の出産にちょうど立ち会ったりもするが、天気がいまひとつハッキリせず、撮影結果に不満が残りつつ昼過ぎに市街に帰る。「なかよし食堂」で昼メシ。三日目にして初めて肉以外のメシもの。しばらく休んだ後「たけさん亭」で早い夜メシ。取材&撮影後、焼肉を一通り食す。最後の牛そばまで肉尽くし。もう肉なんて見たくもない。でもとりあえず取材予定は終了。翌日は泡盛取材のみ。わりと早めにホテルに帰る。

8/22
朝9時に川平の「髙嶺酒造所」へ。泡盛の仕込み過程を数時間かけて取材&撮影。朝から泡盛も試飲。うまい。川平ビーチに一瞬寄り、撮影。その後、近くの「川平ファーム」で有名なパッションフルーツジュース。撮影ポイントをいくつか回って風景を撮ったあと、昨日行った「牛種子牧場」へ。昨日より天気がいいので再撮影。まぁまぁの画が取れた模様。飛行機の時間が近いので、白保の「マエザト食堂」で、すば(大)を急いで腹に入れ、そのまま空港へ。すば、とてもうまかった。東京着午後7時すぎ。


てな取材旅行ざんした。
あれ? 思ったより石垣牛を食べてない気がしてきた。でも、なにしろ肉ばかり食べ続けなのでTOO MUCH感は異様にある。当分肉は食いたくないけど、牛リテラシーも上がりまくり。

え?石垣牛はどの店で食べたらよいか? えーとですね、んー、9月頭には「おいしい店リスト」にまとめます。「すぐ石垣旅行に行くからそれまで待てん!」という方はメールでお教えしまするねー。

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日本一石垣牛にくわしくなったかも

2005年08月22日(月) 22:32:54

石垣島より東京へ帰ってきた。

瞬間風速的にであるが、食べる側として日本で一番石垣牛にくわしくなったかも(笑)。牛肉自体にも相当くわしくなった。理屈的にも舌的にも。前回もそうだったが、今回も肥育農家や繁殖農家で牛の造り手からかなり奥まった話が聞けたし、料理人からもなるほどな話がいろいろ聞けたし、その前後で実際に必死で各店を食べ比べているから、漫然と食べている普段に比べて成長度合いが高いのだ。いまならわりと「肉」が判定できるぞ気分(たぶん気のせい)。
どちらにしろ、ボクの牛肉の舌基準が更新された。こういう「向上」が大好きなので、少しシァーワセ。

石垣島でどんな行動したかは、明日くらいにまとめてみよう。肉取材ばっかりで離島行きはおろかプールすら入っていないし、最終日(つまり今日)だけ晴れてあとは曇天だったような体たらくだが、それでも石垣の空気はボクの脳みその奥深くをギュッギュッとマッサージしてくれた模様。弛緩具合は甚だしく、明日からの仕事が不安である。

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またしてもNY出張(22)NYにてさぬきうどんを想ふ

2004年02月24日(火) 10:38:32

仕事が大変トラブっていて朝から待機。もう夜の8時だが、まだ待機。疲れがたまっているので部屋でゆっくりできるのはいいのだが、ちょっと心配。

近くの本屋に行って911関係の書籍を買い込む。アメリカ側の視点からもきっちり読んでおきたいといまさらながら。とはいえ英語は不得意なので必然的に写真が多いものになる。涙を誘う写真も多く、アメリカがどういう気持ちでアレを捉えていたかが直に伝わってくる。が、アフガンやイラクにも涙を誘う場面は多々あったはず。部外者であるボクはせめてフェアに見なければ、と気持ちを無理矢理切り替える作業。

日本でもめったにない無為なる時間。久しぶりにネットサーフィンなど。このごろまたボクのさぬきうどんページへのアクセスが増えているので久しぶりにさぬきうどん関係ページを見歩く。ブームの本質についての考察は麺聖のページが相変わらず図抜けていて頷くところ多し。彼は本当にクレバーだ。
個人的には、消費者は徹底的に気まぐれであるのが前提だと思っているし、ある権力が育つとそのもの自体の魅力は限りなく薄れるとも思っているので、ブームはすぐに去ると感じている(体感的にはもう終わっている)。問題はブーム後なのに、県をあげてブームの継続を目的にしているのがちょっとつらく感じるかなぁ…(言葉を濁す)。継続を目指すと演出は面白いけど中身がない舞台みたいになるからなぁ。ターミネーター3とかいい例だし。

一時は深くコミットしようとしたさぬきうどんだけど、一部からの執拗かつ一方的なバッシングに嫌気がさし、いまは関わりを持っていない。香川にも行っていない。だからこそ勝手な意見を言うが、ボクがやるなら「ニューヨーク'本格'進出」を志す。それも伝統的な丼麺ではなく、パスタとして上手に具を絡めて(基本は生じょうゆ)、あのツルツルシコシコの麺を世界デビューさせてみたい。さぬきうどんはアウェイでも絶対戦える。というか、勝てる。いまのNYの寿司事情を見ていると確信すら持つ(いくつか流行るコツはある)。ホームで争って疲弊していくには惜しい食べ物なのだ。

とか書いていたら腹減ってきた。さぬきうどん喰いてえ。

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石垣島にてイノシシ狩り

2003年01月27日(月) 1:28:18

今日の石垣は27℃まで上がったらしい。
朝からイノシシ狩りに石垣島の山へ登る。道なき道、獣道を登る。熱帯の森の空気が胸を満たす。獣道を登り切った人しか見れない景色を見る。原始を感じられる数少ない森。自分の存在の小ささを感じながら、イノシシ狩り師匠の背中を追う。

午後は竹富島へ渡る。フェリーで10分。「竹富島で会いましょう」がラジオから流れ、俄然盛り上がる。コンドイビーチの謙虚さ。日本一のビーチかも。

夜はイノシシ料理と海亀料理。地元のイノシシ師匠たちとひたすら泡盛。石垣マラソンで事故があったが、岩手と石垣の深い愛はきっと変わらない。
ワインバーのメルローで〆。明日からお寒い東京。温度だけが低いのではない。

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